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社会人 × プロゲーマー = ALIENWARE Nemo

名刺を配ってプロを目指した社会人ゲーマー

プロゲーマーになりたかったきっかけというのは……去年の EVOLUTION (※毎年ラスベガスで開催されている格闘ゲームの巨大トーナメントイベント)が終わったあたりですね。『ウルトラストリートファイター IV 』部門でベスト 4 に入った時に自分の中で「もっとゲームをしていたい」という気持ちが大きくなっていったんです。

そこで、「イベントに出展するような企業なら話を聞いてくれるのでは?」と東京ゲームショウ 2015 に行きました。まずは自分の会社員名刺を配るところから始めてみよう、と。

ただ、私の仕事は営業ではなく、システムエンジニアなので……企業訪問して営業をして、というのはほとんど初めての体験でした。

その活動の中で、知人の紹介で ALIENWARE にコンタクトを取りました。 2015 年の カプコンカップが終わったときにシリーズ最新作の『ストリートファイター∨』は PC と PlayStation®4 の 2 つのプラットフォームで対戦できるという話を聞いて、「これは ALIENWARE も格ゲーシーンに来るだろうな」と。

契約はスムーズに進んだわけではなかったです。最初のプレゼンでは、「これではちょっとうちではスポンサードできない」と言われました。そこで、「どうしたら自分を売り出せるか」というのを考えて何回かプレゼンに行って、それでようやく締結に至った、という感じでした。最初は具体的にどうやってシーンに ALIENWARE を伝えていくのかを数値化できなかったですね。「社会人プロゲーマーです」という言葉だけでは、なかなか企業も納得できないので、「こうやって売り上げにつなげていきましょう」という話をしていきました。

AW Nemo 

仲間、会社、そして家族から祝福された AW Nemo の門出

今年の 7 月に「プロになった」という発表ができて、一緒に練習してきたプレイヤーたちからは「おめでとう、ようやくだね」と祝福されました。社会人ゲーム仲間に「こういう形でもゲームを続けられる」と伝えられたのではないかと思います

会社の同僚の反応は……少し前にあった上司との面談のときに「実は、自分はカプコンカップというゲーム大会に出場を考えています、スポンサーも獲得したいと思っています」と宣言していたんです。そのとき、上司は「ゲームっていつまでもできるようなもんじゃないからね」というような反応でした。

でも、 EVOLUTION に出て、成果を残してから……会社の後輩の中にもあの大会の配信を見ている人がいて、それが部長にも伝わったそうで。そうしたら、上司が私のことをネットで調べてくれたそうで「お前、有名なやつだったんだなぁ」みたいな……そこで一気にガラッと上司のゲームへのイメージが変わってきまして「本当にスポンサーをつけたいんであればどうやったら会社のルールに違反しないかを手助けしてあげる」と。本当に上司には助けられました。

それから、家族。隣に住んでいる親戚がニコニコ闘会議に出展していて、そこで私が出演していたので、そこで初めて私がネモだ、ということが家族にばれました(笑)。

もともと、あんまり家でゲームをやっていなかったんですよ。だから、大会に出たりしているのも、あまり話をしていなくて。その親戚がニコニコ闘会議で私が有名プレイヤーの「ネモ」だと言うことを知って、親戚が集まったときに話題になって。そのあと、年始にあった中国の大会を親戚一同で見ていたらしいです(笑)。そういうのがあったからか、「スポンサーがついたよ」って家族に報告したら、「おめでとう」と言ってくれました。

AW Nemo 

社会人プロゲーマーとしての AW Nemo

仕事を続けながらプロになる、という夢がかなったのは本当にうれしいことです。でも……契約が決まった瞬間に不安になってしまいました。

それは、仕事とゲームを高い次元で両立しなければいけない、というプレッシャーです。仕事がおろそかになると上司に「ゲームばっかりやってるから仕事がダメなんだ」と思われてしまうのではないか。他のプロゲーマーは専業の方が多いので、好きなだけ練習時間が取れる。彼らと一緒に出場するトーナメントの中で自分が負けてしまうと、「やはり専業じゃないと結果が出せないんだ、やはり社会人じゃきついのかな」って思われてしまう。それは、これから成果を出していくことで一つずつ積み重ねていくしかないですが……。

私が専業プロゲーマーにならかった理由と言うのは「今まで、このやり方で勝てていたから別にこのままでいいかな」というのがまず一つ。それから、「いつまでもゲームを続けていたい」という気持ちと、「いつまでもゲームを続けていられる人を増やしていきたい」という気持ちですね。社会人になったらゲームをやめなきゃいけないと考える日本人は多いと思うんですよ。だから、私はちゃんと企業社会の中で居場所を作り、そこでお金を稼ぐ。その上でゲームを続けていきたいと思っています。

その分、他のプロゲーマーよりも試合数も少なくなりますし、大会に出られる回数が限られているので、やはり数少ない大会で結果を残さなくてはいけない。そこは大きなプレッシャーになっています。ただ、しんどいとか、つらい、というのはありません。とにかく自分が楽しいからこの形を続けていきたい。

それから、私が他のプロと違うところとして挙げられることに、コミュニティの中でプレイを続ける、というところがあります。昨年のストリートファイター IV のツアー期間、ずっとゲームセンターで練習していたんですよ。今もオンラインの対戦は全くやらずに、人の家や、 e スポーツスクエアで開催されている対戦会に参加して練習しています。格闘ゲームというのはコミュニケーションツールのひとつだと思っていますし、いままでゲームを続けてこられたのもゲームセンターで知り合った人たちと話すのが楽しかったからですし。 1 人で黙々とやるのは自分には性が合わないんですよね。

AW Nemo 
AW Nemo 

プロとして初めて臨んだ EVOLUTION で 7 位タイに

今年の EVOLUTION は、プロになれても、なれなくても行くつもりでした。ストリートファイター V 部門の参加者が 5000 人を超えたというニュースもそうですけれど、最終日のトーナメントに残ることができれば ESPN (※世界最大規模のスポーツ専門チャンネル)で放送される、というのが私の中で一番気になっていたところです。マンダレイ・ベイのアリーナで戦える、あの場所に 絶対立ちたいと思っていました。
EVOLUTION って、格闘ゲーマーにとって特別な場所なんですよ。世界中の格ゲープレイヤー みんなが集まって「誰が強いか決めようぜ」っていう。あそこは夢が詰まってる場所なのかなって思います。

私が海外の試合に出るときに心がけているのは「 とにかく寝ないこと」です。時差ボケがあっても寝ない。以前、時差ボケに耐えきれずに寝てしまってすごく気持ち悪くなってしまったんですよね。それからは、ひたすら寝ないことを心がけていました。それと「できるだけ甘いものを摂取すること」ですね。今年は ALIENWARE のノート PC があったので、空き時間に練習ができたのが良かったのかもしれません。実は、こういう大会って会場に練習用の台が用意されていないことが多いんですよ。試合までにゲームに触れる機会がほとんどないのって、結構きびしくて。次の対戦相手がわかっていれば、そのキャラクターのことを調べたり、自分のセットプレイを練習したり、そういうことができるので、ストリートファイター V をインストールしたノート PC を会場に持って行けたのは今までとは大きく違いました。

試合は結果 7 位タイでしたが、 EVOLUTION は世界に数あるトーナメントの中でも結構特別な位置づけで、トップ 8 に残っただけですごいじゃないかっていう認識をされますね。

社会人ゲーマーに夢を持ってほしい

プロゲーマーになってから、 周りの私への見方がすごい変わりました。特に、会社の同僚や地元の友達ですね。特に話したことがなかった会社の同僚に話しかけられたり、いきなり社内メールで「 EVOLUTION お疲れ様でした」と言われたり。それから、社内の内定者懇談会に出たら、内定者が私のことを知っていて、「なんでいるんですか!」って。そこで常務と社長の前で握手させられて(笑)。このあたりは社会人ゲーマーならではですよね。

私の目標は「社会人ゲーマーとして尊敬されるような人になりたい」、「社会人になったらゲームは辞めなきゃいけないものだっていう考えを変えたい、なくしていきたい」というものです。サラリーマンとしての安定した収入にプラスアルファとして、スポンサーからの契約料、大会の賞金、イベント出演費といったお金が入ってくる。そうなってくると、「才能があれば自分もそれを目指してみたい」と思う人も増えてくると思うんです。

とにかく、社会人ゲーマーに夢を持ってほしいんですよ。夢を持ってほしい、というのは「本業を続けながら、趣味の一環としてやってきたことがお金に変わりますよ」ということ。そこにひとつの夢、可能性があると思うんです。

私が先例になったわけじゃないですか。名刺を配ったりプレゼンしたりして、プロゲーマーとしてスポンサーを獲得できた。でも、きちんと現実も見て欲しいんです。お金をもらうって言う事はスポンサーに対して、費用対効果を出さなければいけないですし、会社からは「ゲームばっかりやってるからお前は仕事がおろそかになるんだ」って、通常のミスですら言われてしまう可能性だってある。だからしっかり現実も見て欲しいんです。

「夢を持て」っていう言葉と「現実を見ろ」っていう言葉は矛盾しているようにも思えるけれど……。 5 年、 10 年先を見たときに、そういうのが大事なんじゃないかな、と思っています。

AW Nemo