国内売上で2年連続No.1/なぜ多くの企業がデルのストレージを評価するのか

No.1ベンダーに聞くストレージ管理の「課題」と「解決策」

日経BP総合研究所
フェロー
桔梗原富夫

コロナ禍を機に、業種・業界を問わずデータ活用が本格化しつつある。生活や働き方、ビジネスプロセスなどが一変した現在、データを分析・活用することで新しいニーズに機敏に対応したり、新たな事業モデルやイノベーションの創出につなげていこうとしたりする機運が高まっているのだ。しかし、その実現は一筋縄ではいかない。というのも、データ活用を加速するためには、「データ管理を適切に行うこと」が前提となるからだ。特に企業内のデータ管理では依然として、オンプレミスのストレージが重要な役割を担っているが、その運用管理に課題を抱えているケースが少なくない。

ストレージ容量は爆発的なスピードで増加している一方で、これに関する専門的な知識を持った管理者を確保することは簡単ではない。また、製品には当然ながら寿命があり、その更新時にはデータ移行が必要になる。そのための作業を最小化することも、管理者の負担軽減やリスク回避において、重要になるといえるだろう。

その一方で、データ活用によってDX(デジタル変革)を推進していくには、その基盤となるストレージには高い可用性や信頼性も求められる。さらに、ユーザー体験を高め続けるには、アプリケーションを高速に動かせる高い処理能力も必要だ。

このようにストレージへの要求が多様化・高度化している中、DXで最も広く使われるミッドレンジストレージ市場で、2年連続No.1(※)と評価されてきたのがデル・テクノロジーズ製品である。

なぜデル・テクノロジーズの製品は、多くの企業から高い評価を受けているのか。その設計思想や注目すべき機能などについて、日経BP総合研究所 フェローの桔梗原 富夫がキーパーソンに聞いた。

※出典:IDC Worldwide Quarterly Enterprise Storage Systems Tracker 2020Q4, 2019 – 2020 Share by Company

頭を悩ませる「ストレージ管理」を劇的に簡略化する方法は

一 現在、以前から大きなテーマだったDXが進展しつつあり、その中でDXのためのデータ管理や活用をどうするかが、重要な課題として注目されています。まずはこのあたりの認識からお聞きしたいと思います。

デル・テクノロジーズ株式会社
ストレージプラットフォーム
ソリューション事業本部
システム本部 ディレクター
森山 輝彦氏

森山:データ管理に関しては、大きく2つの側面で見る必要があると考えています。1つは桔梗原さんがお話ししたような「DX向けのデータ管理」、もう1つは「基幹系システムなどのミッションクリティカル系のデータ管理」です。これら2つはこれからの企業システムの両輪として考えていく必要があります。

一 レガシー系とDX系、2つの領域を一体として考えるべきだということですね。ここでは理解しやすいように分けてお聞きしたいのですが、まずレガシー系では何が大きなテーマになりますか。

森山:レガシーシステムで重要なのは堅牢性です。これは昔から変わりません。データへのアクセスが止まってしまうと、それに関連する様々な仕組みも止まってしまうからです。このような事態を避けるには、冗長化などによって信頼性を高めなければなりませんが、それだけでは十分ではありません。冗長化しても問題が発生する可能性はゼロにはならないからです。そこで重要になるのがレジリエンシー(復元力)という考え方です。これは何か問題が発生しても、その影響を最小限に食い止めながら迅速に回復させる、というものです。

一 それは確かにそうですね。近年の金融システム障害をはじめとした事例でも、このことは明らかになっており、レジリエンシーの重要性は改めて注目されているように感じます。

森山:その一方でDX系では、「データをどこに置いて使うのか」ということが重要なテーマになります。数年前から「クラウドファースト」の掛け声のもとにクラウド上でデータ管理を行うケースが増えていますが、「データをどこに置くべきか」は、データの発生源や活用方法、求められるセキュリティレベルなどによって決めるべきなのです。

ここで改めて考えてほしいのが、クラウドというのはあくまでもオペレーションモデルの1つにすぎないということです。企業システムにとってより重要なのは、データからどう価値を生み出すかです。デル・テクノロジーズではこの考え方を「データファースト」と呼んでいます。

一 クラウドはあくまでも手段であり、重要なのはデータであると。その考え方はユーザーサイドから見ても分かりやすいですね。

森山:もちろんクラウドのオペレーションモデルには、従来のオンプレミスにはない様々な優位性があります。例えば、インフラを自前で調達する必要がないことや、製品寿命を考えずに使えること、使いたいときに使いたいだけ使えることなどは、クラウドの大きなメリットです。これに対して従来のオンプレミスでのストレージ製品では、運用管理に高度な専門知識と手間が求められ、容量や性能が不足したときの拡張性にも限界があり、製品寿命が尽きるタイミングでデータ移行を行う必要もありました。

先を見据えた設計で10年超、データ移行が不要

一 オンプレミスならではの問題を解決できれば、パブリッククラウドに出せないデータでも、楽に運用管理できるということでしょうか。

森山:そうです。そのためにデル・テクノロジーズではストレージアーキテクチャを大きく進化させ、製品ラインアップを「Power」ブランドへと集約してきました。これによってレガシーからDXまで、全方位に対応したデータマネジメントを実現できるようにしています。

一 ユーザー層の多いミッドレンジストレージにおけるIDCの調査では、2年連続No.1を獲得していますね。この分野ではどのような設計思想を重要視しているのでしょうか。

森山:10年から20年先を見据えたアーキテクチャを基軸にしています。まず注目していただきたいのが、伸縮自在であらゆるワークロードに対応できるパフォーマンスを発揮できる設計になっていることです。

フラッグシップモデルの「Dell EMC PowerStore」を例に説明しましょう。データを保存するためのNVMeドライブは、エンクロージャースロットに挿入するだけで自動的に、高度に冗長化されたストレージプールに組み込まれるようになっており、常に最新のオールフラッシュストレージが使えるようになっています。管理者はRAIDやストレージプールの設定を改めて行う必要はなく、データ暗号化も自動的に行われます。ハードウエアアシストで実装された高度なデータ削減機能を利用することで、2Uのベースエンクロージャーには現時点で最大1PBのデータを格納でき、また、1アプライアンスあたり拡張エンクロージャーを3台まで追加できるため、最大で2.8PBのデータ保存が可能となります。

各アプライアンスには2台のノード(コントローラー)が接続され、1つのPowerStoreシステムあたり、アプライアンスを最大4台まで増やすことができます。これによってスケールアウト型で容量と処理性能を増やすことも可能です(図1)。

図1●Dell EMC PowerStoreのドライブ実装形態と、容量のスケールアップ方法

最大4アプライアンス(8ノード)までを、1つのクラスターとしてスケールアウトすることが可能。各アプライアンスは非対称、かつモデル、世代の混在も可能になっており、最大11.3PBまでを格納できる

また、ボリューム配置の自動管理機能を装備しており、リソースの最適化と簡素な運用も実現しています。さらに業務停止せずに、ノードを次世代モデルなどにアップグレードすることによって、データ移行なしで、最新モデルへの移行が行えます。この機能によって、少なくとも10年はデータ移行作業を行う必要はありません。

一 10年も移行作業が不要なら、運用管理の負担が大きく下がりますね。

森山:次に紹介したいのが「AppsON」です。これはPowerStoreのアプライアンス上で、お客様のアプリケーションを動かせるというもの(図2)。PowerStoreにはXモデルという提供形態があり、アプライアンスをvSphereベースとすることで可能となります。PowerStoreのストレージOSはコンテナベースとなっており、仮想マシンとして稼働していますが、お客様のアプリケーションもストレージ上で動かすことができます。これにより、データセンター内のサーバーノードを削減することができ、データ転送スピードも高速化できます。

図2●「AppsON」の利用イメージ

PowerStoreのアプライアンスでvSphereを動かし、その上でアプリケーションの仮想マシンを稼働させることが可能だ。PowerStoreではストレージOSがノード上の仮想マシンで動かせるようになっているため、このようなことが実現できるという

例えば国土の広い米国では、地域ごとにコアエッジデータセンターを設置するケースがありますが、このような場所にPowerStoreだけを配置し、この上でアプリケーションを動かすケースが増えています。データ削減率も従来製品よりも大幅に向上しているので、かなりコンパクトに収まります。

日本のお客様の場合も、各拠点用に隔離されたシステムのセット(POD)を複数設置する場合など、設置スペースの削減に大きく貢献できます。

PowerStore上でアプリケーションの仮想マシンも稼働可能

一 PowerStoreをマルチノードで動かせば、vMotionやvSphere Replicationも可能になりますね。

森山:はい。これはグループの1社であるVMwareとの緊密な関係があるデル・テクノロジーズならではの特徴の1つです。

一 コンテナ技術は企業システムの実装でも採用され始めていますが、ストレージでコンテナを採用するメリットはなんでしょうか。

森山:開発生産性が高まり新機能のリリースを迅速化できることと、修正が限定的になりアップグレードが容易になることです。また、コンテナベースになれば、上位製品の機能をミッドレンジ製品に持ち込むことも容易になります。今後はおそらく、すべてのストレージOSがこのような形態になっていくのではないでしょうか。

一 そういうところでも、先を見据えているわけですね。

森山:このほかにも、重複排除やデータ圧縮によってストレージに格納されるデータ量を1/4にすることを保証する「データ削減保証プログラム」や、コントローラーのアップグレードをより柔軟にした「Anytime Upgradeプログラム」も提供しています。さらにオンプレミス製品でありながら、クラウドと同様に使った分だけの料金をお支払いいただく従量課金もご用意しています。これは「Project APEX」と呼ばれる取り組みの中で提供されるものであり、オンプレミスストレージの「as-a-Service」を実現するものです(図3)。

図3●「Project APEX」で提供される「as-a-Service」の全体イメージ

オンプレミスストレージでも、使った分だけ支払うという「as-a-Service」型(図内の“STaaS”)の利用が可能になる

一 まるでPaaSのようにオンプレミスストレージが使えれば、ユーザーとしてはより上位レイヤに意識を集中できますね。

森山:当社もそこを目指しています。お客様がストレージインフラを意識せず、DXの価値に集中できるようにしたい。運用や製品ライフサイクルから解放されれば、これも実現しやすくなるはずです。

一 そうしたユーザー企業の声も反映されているのですか。

森山:その通りです。以前は当社が毎年開催するイベントにご参加いただき、その場でフィードバックを頂いておりましたが、最近ではオンラインでさらに頻繁にお客様の声をお聞きするようになっています。オンライン化したのはコロナ禍の影響ですが、結果的には日本のお客様の声を直接聞ける機会が多くなり、製品にも反映しやすくなっています。

一 日本企業からは信頼性などに厳しい要求が出そうですね。

森山:当社がお客様にご提供する製品は、様々な意味で安心していただけるものでなければなりません。特にストレージは、データを守る基盤です。長期にわたってデータを守り抜けるという確証が持てる製品を、これからもお客様の声をお聞きしながら提供し続けていきたいと考えています。

日経BP社の許可により、2021年4月16日~ 2021年7月15日掲載 の 日経 xTECH Active Special を再構成したものです。

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