スマートホスピタルの実現に向けて拡張性の高い仮想化基盤が必要
函館市の五稜郭の前にある社会福祉法人 函館厚生院 函館五稜郭病院(以下、函館五稜郭病院)は、道南医療圏における急性期型病院で、地域がん診療連携拠点病院にも指定されている。また、臨床研修指定病院として、若い医師の育成にも力を入れていることも特徴の1つだ。病床は480床で、約110人の医師が在籍し、年間6,000件を超える手術を行って、道南医療圏や渡島半島の医療を支えている。
同病院では、ITを積極的に活用し、AI・スマートホスピタルの実現を目指していると函館五稜郭病院 病院長の中田智明氏は説明する。「当院は5年後に改築の時期を迎えますが、その前からスマートホスピタル構想を想定し、5年後や10年後にどうなっていけばよいかを考えてIT導入などを検討していく必要があります。たとえば、外来の患者様に対してはWeb予約やWeb問診などを提供し、患者様の多くの情報が集まった状態で診察を始められるようにしておけば、無駄な待ち時間を減らすことができます。自動化するものは自動化して、迅速に患者様に対応できるようにしなければならないと考えています」。
実際に、函館五稜郭病院では、入院患者に対する毎日の検温や血圧測定、経皮的動脈血酸素飽和度(SPO2)などの計測結果を電子カルテに自動送信する仕組みを取り入れている。「毎日、多くの病室を回って看護師が検温や検脈し、メモしたものを入力するといった手間がなくなり、時間を有効利用することができるようになりました。将来的には、AIなどでモニタリングして、たとえばSPO2が一定の値よりも下がったらアラートが鳴るようにしていきたいですね」と中田氏は話す。
AI・スマートホスピタルの実現を打ち出し、さまざまなシステムを導入してきたが、2014年にHyper-Vで構築した仮想化基盤は2台のサーバーと1台のストレージを使っており、現在ではリソースが不足していた。仮想化基盤に載せたいシステムも物理サーバーで構築する状態で、迅速にサービスを提供することが困難になっていたと函館五稜郭病院 企画情報システム課長の佐々木眞氏は説明する。「病院の改築工事を控えており、サーバー室の引っ越しが避けられない中で、1台でも物理サーバーを減らして仮想化基盤に載せ、移設によるダウンタイムを少なくしたいと考えていました。しかし、当時の仮想化基盤ではスペックが足らず、新たな仮想化基盤を構築する必要があります。また、今後DXを強力に推進していくためには、クラウドサービスを活用していく必要がありますが、電子カルテ端末をインターネットにつなげることはできません。そのため、別途PCを用意するのではなく、リモートデスクトップを使ってインターネットに接続するようにしていましたが、アカウントを追加することができないことも問題でした」。
「勉強会などでHCIの存在を知り、次のシステムは絶対にHCIにしたいと考えていました」と佐々木氏は話を続ける。「仮想化のニーズが今後も増えてくることが予想される中で、HCIであれば、ニーズに合わせてスケールアウトしていくことが容易で、故障などによるシステム停止を抑えることができると考えました。しかし、HCIの導入はコスト面で厳しいという課題もあったのです」。