こうして導入された新仮想化基盤は、2020年1月より本番稼働を開始。外部公開サイト用コンテンツ管理システムやシンクライアント、ファイルサーバーなど、優先度の高いシステムから段階的に移行を進めている。
既に様々な業務改善効果も見え始めている。特にストレージ環境の改善により、日々の業務に使用するVDIの操作速度が向上している。これにより、徐々に導入しつつあるリモート業務にも生産性を落とすことなく、対応できるようになっている。福本氏は「シンクライアントのレスポンスが劇的に向上したと考えています。以前は重たいアプリケーションを利用すると、待ち時間が発生するケースも多く、ユーザーからも不満の声が挙がっていました。しかし現在では、処理時間が半分程度に短縮されており、はっきりと体感できるくらいの違いがあります。オールフラッシュのUnityを導入した甲斐がありましたね」と満足げに語る。
また、懸案であったバックアップについても、大幅な運用改善に成功。仮想化基盤上に移行したサーバーは、自動的にAvamar/Data Domainのバックアップ対象となるため、現場部門の手を煩わすことなく確実に短時間でバックアップを実施できる。同時に、ランサムウェアなどの被害に遭った際の速やかなデータ復旧を可能にできるのも同ソリューションの魅力の1つだ。なお現在は日次でバックアップを行っており、21世代分のデータを保持しているとのことだ。
さらに、ここで見逃せないのが、圧縮・重複排除機能の効果である。本番稼働開始から約2ヶ月の時点で、バックアップデータの容量は約1.5PBに達している。しかし、実際に使用している容量は約7TBと、実に約220倍もの圧縮・重複排除率を達成。なお、この効果は、類似した環境が多数存在するVDIで特に大きく発揮されている。働き方改革や事業継続性の強化に向けて、リモートワークの需要が一段と高まる中、これを支えるVDIに最適なバックアップ基盤が実現できたのだ。福本氏は「これだけリソースを有効に活用できれば、今後どんどんシステムを追加しても全く問題なく対応できます」と語る。
加えて、インフラの信頼性・安定性も大きく向上。旧環境では、単体サーバーで構築された部門システムなどに障害が発生した場合、復旧までに長い時間を要するおそれもあった。しかし、現在では仮想化基盤で高い可用性や耐障害性が担保されている。「消防署のシステムなど『止められないシステム』も多いので、こうした環境が実現できたことは大きい。マルチベンダー環境のように障害原因の切り分けで苦労する心配もありませんし、Dell EMCの『Secure Remote Support』による遠隔監視も行ってもらえますので、安心感は格段に高まりました」(福本氏)
同市では、今後も既存システムの移行を順次進めていくが、これが完了した暁にはラック4本分の機器が削減される予定だ。これに伴い、電気代も年間数十万円下がると見込まれている。全庁的な省エネの取り組みにも、大きく寄与しているのである。
「今回は情報系システムが対象ですが、数年後にはインターネット分離のために導入したサーバー群も更新時期を迎えます。そうしたものを収容するインフラとしても、今回の基盤を活用していければ」と展望を語る福本氏。その取り組みを、Dell EMCもしっかりと下支えしていく。