従来と同等のコストで規模を10倍に低帯域でも安定的な処理を実現
IT投資の抑制を図りつつ、バックアップ対象のクライアントを10倍に拡大する。この厳しい要件に応えられる製品として新たに採用されたのが、前述のAvamarや「Dell EMC Data Domain」(以下、Data Domain)などのバックアップ製品を一体型で提供するデータ保護コンバージド・アプライアンス「Dell EMC IDPA DP5800」(以下、IDPA DP5800)である。今泉 氏は「デル・テクノロジーズに何かいいソリューションはないか相談したところ、IDPA DP5800の提案を受けました。当社ではData Domainを以前から利用しており、製品に関しては既に実績がありました。加えて大きかったのがコストであり、従来と同等の費用で4,000台分のバックアップを賄える。まさにピッタリのソリューションでした」と語る。
こうして導入されたIDPA DP5800は、2020年8月より本番稼働を開始。システム構築面での工夫としては、ユーザーに意識させないように展開を進めていった点が挙げられる。「たとえば、Avamarエージェントのインストールについても、資産管理ソフトの機能を利用してすべてリモートで実施。クライアントがネットワークにつながると、バックグラウンドで自動的にインストールが行われますので、ユーザー側での作業は不要です。導入に際して苦労するような場面は皆無でした」と松本氏は語る。
サーバーのバックアップは夜間に行うのが一般的だが、クライアントの場合は端末の電源が入っている必要があるため、同社では午前10時半~午後3時半の日中帯にバックアップジョブを設定。あらかじめ設定された台数分のバックアップが順番に実施されるようにしている。取材時点では既に約1,000台分のクライアントが新システム側の対象となっていたが、概ね90分~120分程度でバックアップが完了するとのこと。もちろん、こうした処理についても、ユーザーが全く気付かないうちに行われる。
「これくらいの速度が確保できていれば、4,000台全ての展開が終わっても十分所定時間内に収まります。差分データしか送りませんので、回線状態のあまり良くないモバイル環境などでも問題なくバックアップを取得できています」と今泉氏。また、松本氏も「各種の設定が柔軟に行えるのもIDPA DP5800の良さです。一度、台数が一気に増えた時にネットワークを圧迫してしまったのですが、転送に用いる帯域やクライアントのCPU使用率などを細かく制御できるため、すぐに対処できました。まさに『かゆいところに手が届く』製品という印象です」と語る。基本的に前日のデータが残っていればほとんどの事態に対応できると思われるが、同社ではイレギュラーな要望にも応じられるよう、一週間分のデータを保持しているとのことだ。