• お客様の事例

    ジオ・サーチ株式会社

    • 道路などの社会インフラを守る路面下空洞調査にAIを活用し、より多くの診断と精度向上を実現

    • ビジネス課題

      独自の最先端技術で路面下空洞調査などを行っているジオ・サーチ株式会社では、AIによる画像解析を行っていた。ディープラーニングによる新たな推論モデルを開発した同社では、解析の自動化を目指すために高性能なGPUサーバーを求めていた。

    • 導入効果

      • 新たな推論モデルを稼働させるための性能要求を満たせる
      • AIの活用によって年間12万㎞の路面下空洞調査を目指す
      • 属人化された空洞診断業務の標準化を目指す
      • iDRACによる遠隔管理で現場に行かなくても運用管理が可能
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        「橋梁床版・舗装内部の調査や埋設物位置確認の調査でもAIを活用できるようにしていきたいですね。AIをうまく活用することで、業務の標準化を目指し、社会インフラに対して大きな貢献をしていきたいと考えています」

        ジオ・サーチ株式会社
        執行役員
        減災事業本部長
        藤井 邦男氏

    • 路面下空洞調査の解析にAIを活用

      道路・護岸の空洞化、橋梁床版・舗装内部、埋設物位置確認などの調査を行っているジオ・サーチ株式会社(以下、ジオ・サーチ)は、マイクロ波を使って地下の構造を見える化する自動車SKELE-CAR®(以下、スケルカー)を使って全国の道路などを走り、インフラの保護や「減災」に貢献しています。「阪神淡路大震災を契機に、これまでの防災で被害をなくすという考え方から、いかに被害を最低限の影響に抑えるかという減災の考え方に変わってきました。自然災害の頻発化・激甚化の一方で社会インフラの老朽化も問題となってきていますが、AIを活用すれば、災害時に二アリアルタイムで被害状況を把握し迅速な復旧に貢献することが期待できます」とジオ・サーチ株式会社執行役員 減災事業本部長の藤井邦男氏は説明する。

      ジオ・サーチでは、約20年前から路面下空洞調査の解析にAIを取り入れてきたという。「我々は、30年以上の知見を蓄積しながら路面下探査の解析を行ってきました。従来の方法だと、ジオ・サーチが1年間で調査できるのは、交通・物流の主要となる幹線道路を中心とした約2万㎞でした。しかし、日本の道路の総延長は約120万㎞あり、定期的に調査を行うには膨大な量の画像解析が必要となる一方、空洞診断士を育てるには最低でも5年、エキスパートとなるには10年の教育が必要となります。そこで、解析の自動化と効率化を行うために、AIを活用したいと考えていました」と話すジオ・サーチ株式会社減災事業本部画像診断プログラム統括の村瀬貴義氏は、ここ3年くらいでディープラーニングの技術が進化し、ようやく業務の一部として使えるようになってきていると明かしてくれた。

      年間9,000か所の道路陥没が発生しているという調査がある中、道路陥没を半減させるためには年間12万㎞の路面下空洞調査が必要と考え、AIを活用して1日400~500㎞の調査データを半日で解析することを目指していた。そのため、ジオ・サーチ株式会社技術開発センターソフトウェア開発リーダーの近藤大樹氏が中心となり、東京大学と産学共同で新たなディープラーニングの推論モデルを開発してきたといい、この推論モデルを稼働させる優れたプラットフォームを求めていた。

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        「空洞診断士を育てるには最低でも5年、エキスパートとなるには10年の教育が必要となります。そこで、解析の自動化と効率化を行うために、AIを活用したいと考えていました」

        ジオ・サーチ株式会社
        減災事業本部 画像診断プログラム統括
        村瀬 貴義氏

    • 膨大なデータの転送コストを考えてPowerEdgeをオンプレミスに導入

      新たな推論モデルの解析を行うために開発された環境は、TensorFlowを利用したDockerベースのコンテナAIである。その環境を動かすプラットフォームとしては、オンプレミスとパブリッククラウドの2つの選択肢があったと近藤氏は次のように説明する。「解析を行うためには、推論に必要なデータを1日に40~50GBサーバーに送る必要があります。パブリッククラウドを利用する場合は、それだけでも大きなコストがかかることになり、試算では、1年間のパブリッククラウド運用コストで、オンプレミス環境の導入コストが賄えるという結果となりました。また、パブリッククラウドのサービス自体が停止してしまうと復旧や問題回避の対応に向けて当社側で何もできなくなるというリスクもあり、オンプレミスであれば何かあっても自分たちでコントロールできると考えました」。

      オンプレミスに導入するAI用途のGPUサーバーを探していたジオ・サーチでは、デル・テクノロジーズが提供している「GPUサーバー貸し出しプログラム」を見つけ、すぐにデル・テクノロジーズに相談を持ち掛けたという。「オンプレミスでの導入は既存システムと連携がしやすい、カスタマイズ性が高いといったメリットがありますが、導入後にリソースの変更がしにくいといったデメリットもあります。そのため、GPU貸し出しプログラムで事前に検証できたのはよかったですね。また、ProSupport Plusの手厚いサポートが受けられるのも安心しました。GPUサーバーの選定は、①性能が満たせること ②拡張性があること ③自社で運用ができることを重視して決めました。あと、GPUサーバー導入は電源の検討も重要だと思います。検証時も電源について相談するとすぐに来てくれて100Vのコンセントで動作できるように設定変更してくれました」とジオ・サーチ株式会社減災事業本部ネットワーク・チーフエンジニアの小澤宏美氏は話す。また、近藤氏も検証機をすぐに使うことができて、作成した推論モデルが動作することを確認でき、十分に要求性能を満たせることが確認できたと評価している。

      2021年8月にNVIDIA® T4 TensorコアGPUを3枚搭載した4台のPowerEdge R740xdを導入し環境を構築後、並列処理も組み入れ、2022年2月からパイロットプロジェクトを開始させている。ディープラーニングの学習ではNVIDIA® V100 TensorコアGPUを使っていたが、推論モデルの動作ではNVIDIA® V100とNVIDIA® T4に大きな速度の違いはなく、よりコストパフォーマンスの高いNVIDIA® T4の枚数を増やしたほうがよいと判断している。

      また、路面下空洞調査のデータは本社や各事業所に置かれたNASで管理しているが、拡張性や電源の問題からPowerEdge R740xdは自社データセンターに置くことにしている。「遠隔地にGPUサーバーがあるので、PowerEdge用のリモート管理ツールのiDRAC(アイドラック)で管理できるのは非常に便利ですね。OSも遠隔でインストールできて、現地に行かなくてもよいのは助かりましたし、使い方がわからないときにも的確にサポートしてくれました」(近藤氏)。

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        「次のシステム改修では、ペタバイトクラスのNASを用意してGPUサーバーを増強し、膨大な量の画像解析ができるようにしていきます」

        ジオ・サーチ株式会社
        減災事業本部 ネットワーク・チーフエンジニア
        小澤 宏美氏

    • 年間12万㎞の路面下空洞調査の実現を目指す

      パイロットプロジェクトを開始したばかりのジオ・サーチだが、使い勝手が非常によく、現場の評判も高いと村瀬氏は説明する。今後はよりAIの精度を高めていき、目標の年間12万㎞の路面下空洞調査を実現していきたいと考えており、災害や事故で発生した陥没の緊急調査にも今回構築したAIプラットフォームが活躍できることが期待されている。

      また、藤井氏は、AIの活用を浸透させるためには、次のような考え方が重要だと話してくれた。「社内の研修などでは、人の仕事がAIに取って代わるものではなく、AIは人の能力を高めて補助してくれるものだと説明しています。我々は、AIを使うことが目的ではなく、多くの解析が必要という課題に対する解決策の1つがAIだと考えています。AIを使わなければならないという思考になると、導入に躊躇しがちになるのではないでしょうか。大切なのは、何をどのようなスピードで行っていくかを設定し、それを実現するためにどのようにAIを使うことができるかを経営判断していくことです。人が判断しなければならないところは必ずあるし、人が必要なところとAIができることをしっかりと見極めることが重要ではないかと考えています」。

      更に、近藤氏は、「AIが人を支援する、持てる力を拡張するツールの1つだと考えれば、今以上にAI活用のハードルは下がるはずです。実際に当社ではAIを、Artificial Intelligence(人工知能)ではなくAugmented Intelligence(拡張知能)であるととらえています」と続ける。

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        「パブリッククラウドのサービス自体が停止してしまうと復旧や問題回避の対応に向けて当社側で何もできなくなるというリスクもあり、オンプレミスであれば何かあっても自分たちでコントロールできると考えました」

        ジオ・サーチ株式会社
        技術開発センター ソフトウェア開発リーダー
        近藤 大樹氏

    • システムをデータセンターに集約してAIの活用範囲を拡げていく

      今後のシステム拡張について小澤氏は、次のように話す。「調査を行っているスケルカーは、上と左右のカメラで動画を撮りながら走り、下からマイクロ波を出して、大容量のデータを収集しています。これらのデータは地域ごとに分割してNASで管理していますが、今後はエリアレスの構成にしていきたいと考えています。ペタバイトクラスのNASを用意してGPUサーバーを増強し、膨大な量の画像解析ができるようにしていきます」。

      藤井氏も、今後のAIの活用範囲を拡げていきたいと話す。「台湾事務所に続いて、新たに米国にも現地法人を設立し、今後はグローバルで日本の調査技術を提供していこうと考えています。より多くの調査を精度高く行うためにも、路面下空洞調査だけでなく、橋梁床版・舗装内部の調査や埋設物位置確認の調査でもAIを活用できるようにしていきたいですね。AIをうまく活用することで、業務の標準化を目指し、社会インフラに対して大きな貢献をしていきたいと考えています」。

      地震だけでなく、大雨や洪水などの災害が増えてきている中で、老朽化が課題となっている道路や橋梁、埋設管などの社会インフラを守ることは非常に大きな課題となっていると言ってもよい。30年以上のノウハウと技術を結集させ、東日本大震災でも緊急調査などで大きな社会貢献を果たしてきたジオ・サーチは、今後も「減災」をいかに実現していくかを考え、社会インフラを守るためにスケルカーを走らせていく。

    • (左から)小澤宏美氏、村瀬貴義氏、藤井邦男氏、近藤大樹氏 

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    • お客様名 : ジオ・サーチ株式会社 

      業種 : サービス業 

      場所 : 日本/東京