増大するPC管理に悩むIT部門に送る「処方箋」 顧客に向き合う時間を1秒でも多く創出するためにベルリッツが行った変革は

PCが「当たり前」に使える舞台裏に潜む多くの苦労

日々の業務を行う上でPCは欠かせない存在だ。現場の社員からすれば、そのPCを使える状態で提供してもらうのは「当たり前」のことだが、その舞台裏を支えるIT部門からすると、やや事情は異なる。

「当たり前」を提供するためには、必要なアプリケーションの組み込みや、セキュリティ対策を施すといったキッティング作業が必要だ。さらに動作検証し、問題がないことを確認した上で現場に支給する。これは一律の作業ではなく、部署や仕事の内容によって組み込むアプリケーションが変わったり、細かな権限設定が必要になったりする。

社員が数百人、数千人の企業になれば、その人数分の作業が必要になる。この負担は並大抵ではない。しかも昨今はコロナ禍を機に働き方のデジタルシフトが進み、オフィスだけでなく自宅でもPCを使う機会が増えたことで要求も多様化し、IT部門の負担はますます高まっている。

こうした作業に時間を取られると、本来の業務が圧迫されてしまい、新しい挑戦や顧客に向き合う余裕がなくなる。デジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性が叫ばれる今、これは企業にとって大きな痛手だ。

Windows 10 PCはマイクロソフトのセットアップサービス「Windows Autopilot」や「Microsoft Intune」を使えば、キッティングやデプロイを効率化できるが、必要なすべてのツールを持っているわけではなく、新しく導入するコストも時間も捻出できない場合が多い。

そうした中、柔軟性の高いサービスと独自の工夫で、この課題を解決した企業がある。英会話・語学スクールのベルリッツ・ジャパンだ。ここでは同社の成功の秘訣と具体的な仕組みについて紹介したい。

1台に100分かかっていたキッティング作業がゼロに

ベルリッツ・ジャパン株式会社
ITIC部 部長 阿久津 大和氏

ベルリッツは140年以上にわたり培ってきたベルリッツ・メソッドを基に高品質な教師陣による語学レッスンを70の国と地域で展開している。国内では英会話をはじめとする語学スクールを55教室とオンラインで展開する。

「聞ける・話せるようになるだけでなく、語学を通じた異文化理解とコミュニケーション力の向上に貢献する。お客様の新しい未来への創造価値を提供することをモットーに事業を展開しています」。こう話すのは、同社の阿久津 大和氏だ。

学習スタイル、プログラムの内容やスケジュールなどもカスタマイズ可能、オンラインレッスンでも世界中の教師と連携し、教室と変わらないクオリティで24時間いつでも受けられる。今年6月にAIと連動したWeb自己学習のプロダクトとオンラインレッスンのプラットフォームを刷新し、さらなる生徒の多様なニーズへの対応が可能となった。また、3年前からDX戦略の一環として、Microsoft365の導入などオフィス業務環境の改善にも取り組んでいる。

こうした取り組みの中、事業におけるPCの重要性が一層高まってきた。特に高品質なオンラインサービスを提供するためにはPCが脆弱では成り立たないからだ。オフィスの事務・管理部門のユーザーも含めると、同社が使うPCの総数は1500台に及ぶ。リプレース時には数百台規模のPC導入をサポートしなければならない。DX化により、ITへ求められる要求も変化した。「高まる作業負担を何とか軽減しないと新たな全社の挑戦に応えていけないと考えていました」と阿久津氏は振り返る。

ベルリッツ・ジャパン株式会社
ITIC部 守永 基規氏

そこで考えたのが、キッティングとデプロイにWindows Autopilotと独自のデバイス管理ツールを用いる方法だ。エンドユーザーが認証用のメールアドレスを入力すると、あらかじめ作成しておいたカスタムイメージに基づいて必要なアプリケーションが組み込まれ、PCのデプロイが完了する。しかし、Microsoft Intuneを独自で持っていない、制約上、独自のデバイス管理ツールでは配布できないアプリケーションもあり、この仕組みが使えない。

この課題を追加コストなしで解決するために活用したのが、デル・テクノロジーズの「ProDeploy Client Suite」である(図)。デル・テクノロジーズの工場でこちらが指定したWindows 10マスターイメージを組み込み、全国の教室へPCを送付してもらう。現場ではメールアドレスを入力すれば、15分待つだけでセットアップが完了しすぐにPCを使えるようになる。「以前は1台あたり100分程度かかっていたキッティング作業時間がゼロになりました」とベルリッツ・ジャパンの守永 基規氏はメリットを述べる。このほかにも発注から納品が1週間短縮され、外部キッティング費用にかかる費用が1台につき数千円の削減が実現でき導入効果は絶大だ。

図●ProDeploy Client Suiteのサービス概要

デル・テクノロジーズのTechDirectポータルからPCの導入・展開に必要な情報を一元管理でき、デプロイの自動化・簡素化を実現する。サービスレベルごとに3つのメニューがあり、ニーズに応じて選択できる

顧客に寄り添う姿勢を評価し、PC調達をデル・テクノロジーズに一本化

ベルリッツ・ジャパン株式会社
ITIC部 インフラストラクチャ、サポート マネージャー
ダニエレット スティーブン氏

ベルリッツ・ジャパンがProDeploy Client Suiteを採用したのは、DX推進に向けたタブレットPCの導入がきっかけだったという。「以前は拠点やユーザーの意向を重視してPCを調達していたため、メーカーや機種がばらばらだったのです。キッティングのパターンがいくつもあって作業は非常に煩雑でした」と同社のダニエレット スティーブン氏は打ち明ける。

故障対応はITIC部が一括してメーカーに依頼していたため、事前に故障までの経緯や発生する現象などの確認が必要で、こちらも手間と時間がかかっていた。これを解決するため、調達の一本化を考えた。複数メーカーを比較検討し、最終的に選択したのがデル・テクノロジーズだ。「PCを売るだけでなく、キッティングの課題についても相談に応じてくれました。我々の立場で課題解決を考えてくれる真摯な姿勢が決め手になりました」と阿久津氏は語る。

もちろん、PCの性能や幅広いポートフォリオも大きな選定ポイントになった。例えば、教師用PCはオンラインレッスンのほか、教材管理や生徒の進捗管理も行うため、多目的な用途に対応し十分なパフォーマンスを確保できなければならない。移動の機会も多いので、コンパクトさと耐久性も求められる。

タブレットPCの導入は生徒のレッスンを受け持つ教師用PCを第一に考えていたため、こうした要件で製品選定を行った。その結果、採用したのが、SSD搭載の2-in-1モデル「Latitude 3190 2-in-1」である(写真)。「2-in-1モデルで、こちらが求める性能・耐久性などの要件を満たすPCはデル・テクノロジーズ製品以外にありませんでした」と阿久津氏は評価する。

こうして同社はLatitude 3190 2-in-1を段階的に合計600台導入。教師用タブレットPCの導入は順次進めており、今年中にさらに200台追加導入する計画だという。この導入を機に、キッティングとデプロイの課題解決のために採用したのがProDeploy Client Suiteというわけだ。

写真●Latitude 3190 2-in-1

Windows 10 Proに対応し、クラス最高水準の耐久性を備えた11.6インチの2-in-1モデル。滴下や落下に強く、タッチスクリーンは従来ディスプレイの10倍の耐久性を誇る。タブレットとしてもPCとしても使えるほか、オプションのアクティブペンで表示や書き込みも可能だ

全社のPC展開に要するリードタイムを1週間短縮

ProDeploy Client Suiteを、同社は具体的にどのように活用しているのか。まずデル・テクノロジーズの工場で、各PCにWindows 10マスターイメージを組み込む。ベルリッツ・ジャパンでは端末に組み込むアプリケーションなどを定義したカスタムイメージを作成する。次に利用するのが、デル・テクノロジーズ独自のマスターイメージ作成支援ツール「Dell ImageAssist」だ。これにより、機種に依存しないカスタムイメージを作成でき、イメージ作成後は工場を通して別の機種へもイメージコピーが可能になる。この状態で各PCはデル・テクノロジーズの工場から出荷され、全国の各教室に直送される。

アプリケーションを展開するソフトウエアは、独自のデバイス管理ツール上で管理され、Microsoft Azureと連携する。ユーザーが最初に行う作業は、PCを立ち上げて認証用の自分のメールアドレスを入力すること。するとAzureからコンピュータ名を引っ張り、独自のデバイス管理ツールからアプリケーションが展開されてPCのデプロイが完了する。1台ずつ人手でキッティングする必要はない。その効果は冒頭で紹介した通りだ。デプロイも自動で実行される。「これにより、PC導入のリードタイムは1週間程度短縮できました」と守永氏は語る。

以前はPCデプロイ後も追加設定やその確認など“残キッティング”が必要だったが、今はこれも不要になった。「ITIC部の負担軽減に加え、現場の教師も煩わしさがなくなったと好評です」(スティーブン氏)。

端末は耐久性が高く、破損率も前機種より大幅に少ない。サポートは「Dell ProSupport」を利用しているため、ハード故障時のオンサイト保守や代替機の提供も迅速だという。

多くのメリットを享受できたことから、今後も新規導入やリプレースするPCにはProDeploy Client Suiteを活用していく予定だ。今回、独自のデバイス管理ツールで配布できないアプリケーションがあったことからProDeploy Client Suiteの採用に至ったが、独自のデバイス管理ツールで対応可能なアプリケーションに変えていけば、デル汎用イメージ(Generic Image)を利用することでマスターイメージの作成自体が不要になり、さらなる工数削減が見込めるという。

「多くの人と時間を取られていたPC導入工数を大幅に削減できたことで、ベルリッツ・ジャパンの社員がお客様に1秒でも多く向き合う時間を創出できた」と話す阿久津氏。ベルリッツ・ジャパンはこの強みを生かし、よりよい学びの環境を提供することで、さらなる成長を目指す考えだ。

日経BP社の許可により、2021年9月30日~ 2021年12月29日掲載 の 日経 xTECH Active Special を再構成したものです。

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