調査で分かったIT部門の課題とその解決策。オンプレとクラウドの”いいとこ取り”を可能にする新しいIT調達とは?

日経クロステックActiveリサーチ Specialでは「ITシステムのアズ・ア・サービス化に関する実態調査」を2021年9~11月にかけて実施した。これにより、現在のIT部門が直面するITインフラに関する課題が浮かび上がった。多くの企業がオンプレミスとパブリッククラウドのいずれにも、様々な課題があると認識しているからだ。それでは具体的にどのような課題があり、それを本質的に解決するには何が必要なのか。ここでは新しいアプローチも含めた解決策について紹介したい。

オンプレミスとクラウドの両方に課題を感じているIT部門

日本企業のIT環境は、現在どのような課題に直面しているのか。そしてITシステムを構築・運用するIT部門は、将来に向けてどのような期待や展望を持っているのか。こうしたことを明らかにするため、2021年9~11月にかけて実施されたのが、「ITシステムのアズ・ア・サービス化に関する実態調査」である。この調査では多岐にわたる質問に対する回答が集められたが、いくつかの興味深い傾向が見られた。

※日経クロステックActive読者を対象とした「ITシステムのアズ・ア・サービス化に関する実態調査」, 日経BP, 日経クロステックActiveリサーチSpecial, 2021年9月~11月実施

調査手法:インターネット調査
調査対象:日経クロステックActive読者
調査期間:2021年9月14日~11月2日
有効回答:399件

まず注目したいのが「ITインフラの調達と管理」に関して直面している課題だ。「現在のITインフラ調達と管理において、直面している主な課題」について聞いた問いに対し、多くの回答者が「ITを取り巻く環境の変化に対して機敏な動きを取れない」「ITインフラ管理が煩雑」「ITインフラに関する人材・スキルセット不足」を挙げている。前者2つの回答は明らかに、オンプレミス環境で直面している課題だ。その調達と管理が煩雑であるため、変化対応力を発揮することが難しくなっているのだ。またスキルセットの問題も、社内でITインフラを構成・運用しているからこその問題意識といえる。

その一方で「パブリッククラウドの調達と管理に関する課題」に関する回答は、現在のIT部門が抱えるジレンマを浮き彫りにする結果となった。パブリッククラウドの課題として「セキュリティとデータ保護、保存」という回答が極めて多く、「運用コストを予測するのが困難」「料金体系の複雑さ」「クラウドベンダーロックイン」を挙げる回答者も多かった。ITインフラの調達・管理といったオンプレミスの問題を解決する手段として、最近ではパブリッククラウドへの注目度が高まっているものの、すんなりとは移行できない事情が数多く存在することが見て取れる。

デル・テクノロジーズ株式会社
APEXビジネスデベロップメントマネージャー
木村 紳也氏

この調査結果を踏まえた上で「オンプレミスかパブリッククラウドかというのはワークロードをどこで処理するかという問題に過ぎず、IT部門が求めている本質は『アズ・ア・サービス』と『サブスクリプション方式』なのではないでしょうか。というのも、『アズ・ア・サービスに対してシステム運用の観点で期待するメリット』と『ITシステムをサブスクリプション方式に移行することのメリット』という2つの設問への回答を見ると、それぞれに対して高い期待を持っていることが分かるからです」とデル・テクノロジーズの木村 紳也氏は語る。

アズ・ア・サービスのメリットに関しては、「ITシステム運用の簡素化」を半数近くの回答者が挙げており、「DXプロジェクト推進のスピードアップ」「運用プロセスの改善」「ITに係る作業の自動化・効率化」を挙げる回答者も多い。一方サブスクリプション方式のメリットでは、「イニシャルコストの軽減」が最も多く、「ビジネスニーズに合わせてインフラを必要な時に必要なだけ調達できる」「ハードウエア、ソフトウエア、サービス、サポートの標準化」がこれに続いている。

IT部門の調達業務におけるコマース体験を変革するAPEX

デル・テクノロジーズ株式会社
DCWソリューション本部
平原 一雄氏

これらの調査結果を見ると、オンプレミスからパブリッククラウドへのシフトは、すべてのシステムにおいて必然的な流れであるわけではないことが分かる。オンプレミスにアズ・ア・サービスやサブスクリプションモデルを取り込むことができれば、オンプレミスのままでも課題を解決できる可能性が高いからだ。その結果、オンプレミスに適したシステムはオンプレミス、パブリッククラウドが適したシステムはパブリッククラウドと、適材適所でインフラを選択しながら、全体最適化されたIT環境を実現できるようになる。

このような真の意味でのハイブリッドクラウド環境を実現するため、デル・テクノロジーズが提供しているのが「APEX」である。これはサーバー、ストレージなどのITインフラ製品をアズ・ア・サービス型で提供するもので、料金体系もサブスクリプション型となっている。またすべてのITインフラのリソースを、1つの統合コンソール「APEX Console」でシームレスに管理可能な点も大きな特徴だ。このAPEX Consoleについて、デル・テクノロジーズの平原 一雄氏は次のように説明する。

「これはシンプルで素早い調達を可能にする、新しいシステム形態です。サービスカタログ化されたAPEXの各種リソースやサービスを、ここで選択するだけで21日以内に調達でき、その拡張も迅速に行えるようになっています。またリソース割当に必要なプロビジョングツールや、それらの稼働状況を把握するためのモニタリングツールもご用意しており、健全性やコストの確認も容易です。APEX ConsoleはIT部門の調達業務に、新たな体験をもたらすものだと考えています」

その具体的な調達イメージは、以下のようになる。

例えばストレージ容量を調達したい場合、APEX Consoleの中にあるサービスカタログの中からストレージを選択する。その後、この注文に対して名称と説明を付け、パフォーマンス(速度最適型/容量最適型/バランス型)の選択、基本容量(初期容量)の選択、サブスクリプション期間(1年/3年)の選択、設置場所や設置条件の指定を行う。これによってオーダーサマリーが提示され、見積額が提示される。ここから社内承認プロセスと連携することも可能だ。承認が下りれば発注されデリバリープロセスに進む。前述のように21日以内に、要求したリソース提供に必要なハードウエアがデル・テクノロジーズによって設置され、調達したリソースの利用が可能になる。

サービスカタログからストレージを選択し、パフォーマンスや初期容量などを選択するだけで調達が行える。ここから社内の承認プロセスと連携させることも可能だ

「既に契約している内容に関しても、APEX Consoleでいつでも確認できます。またお支払いの際にはPDFの請求書を発行することもでき、課金状況もチェックできます。ここまで一貫したサービスコンソールを提供しているベンダーは、ほかにはないと思います」(平原氏)

利用料の追加も容易で追加課金の透明性も高い

APEXの基本的な考え方は「アウトカム(成果)ベース」であり、顧客はインフラを構成する個々のハードウエアを意識することなく、それらが提供する能力(ストレージであればパフォーマンスや容量)だけを気にすればいい。その能力を提供するために必要な細々とした作業は、すべてデル・テクノロジーズに任せられる。コスト負担も、ハードウエアそのもののコストではなく、利用した能力に対して月額で支払うことになる。これはオンプレミスの調達において、革命的な変化だといえるだろう。

これに加えて使用リソースの変動に対する柔軟性が高いことも、大きな特徴になっていると平原氏は語る。

「APEXでは標準で25%の余剰リソースが用意されており、これはいつでも使うことができます。例えばデータ量がバーストし、追加のストレージ容量が急に必要になった場合でも、この範囲内の追加容量をすぐに利用可能にできるのです」

ここで注目したいのが、初期容量(基本容量)を超えた際の追加課金の計算方法である。APEXでは基本容量に応じてGB単価が決まるが、その単価を基に追加課金の料金が算出されるようになっている。

「余剰リソースをあらかじめ組み込んだ形で製品を納品し、必要に応じて余剰分を追加できるベンダーはほかにもありますが、その場合にはプレミア料金が上乗せされるケースが一般的です。これに対してAPEXではプレミア料金がなく、利用料に比例する形で課金金額が決まります。そのため余計なコストが発生せず、その予測も容易なのです」(平原氏)

もちろんバーストが収まった後は、追加容量を解放し、初期容量に戻すことができる。これによって課金金額も元に戻る。リソースの利用状況はデル・テクノロジーズがモニタリングしており、バースト量が25%の範囲を超える可能性があると判断された場合には、そのバーストが発生する前に顧客と協議の上、デル・テクノロジーズがハードウエアを追加する。もちろんその際の追加料金は発生しない。課金されるのはそのリソースを使ったときである。

「必要な容量が継続的に増大していった場合には、契約期間途中でも随時、基本容量を引き上げることが可能です。GB単価は基本容量が大きいほど安くなるように設定されていますので、基本容量を引き上げることでGB単価が下がることになります。システムのライフサイクルが終盤に向かい必要な容量が減少した場合には、契約の区切りのタイミングで契約容量をダウンさせることも可能です。またハードウエアそのもののライフサイクルが終了に近づいた場合には、デル・テクノロジーズが新しい世代の機器に入れ替えます。その際にもサービス停止は発生しません」(平原氏)

これならシステムのライフサイクルに合わせて、最適な量のリソースを確保しつつ、不要になった場合にはそれを解放させ、コスト負担を軽減できる。オンプレミスではライフサイクル全体を考えた上で、ある程度の安全率をかけ合わせた量のリソースを調達することが一般的であり、その結果ライフサイクルの初期と終盤ではムダなコストが発生していたが、このような問題も解決できるわけだ。またハードウエアの保守期間終了に伴うリプレースも、意識する必要がなくなる。IT部門の負担は大幅に軽減されるはずだ。

ライフサイクル全体を通じて常にCSMが顧客を支援

ここまででAPEX ConsoleとAPEXのサブスクリプション内容について紹介してきたが、APEXにはもう1つ注目したいポイントがある。それは「カスタマーサクセスマネージャー」の存在だ。

「デル・テクノロジーズはこれまでも、製品を購入していただいたお客様に対し、Dell Technologies ProDeploy PlusやDell Technologies ProSupport Plusといった、エンタープライズ向けサポートを提供してきました。APEXでは、それらの従来のサポートから、導入から撤去までお客様システムのライフサイクル全体をカバーしたサービススキームを確立。サブスク開始後も満足できるユーザ体験を提供できるようなシームレスなサポート体制を整備しています。その窓口として個々のお客様を担当するのがカスタマーサクセスマネージャー(CSM)です」(木村氏)

APEXの取引開始時に担当となるCSMが決められ、その後はライフサイクル全体でAPEX活用を支援する。その目標は顧客の成功に貢献することであり、そのために常に顧客と伴走する存在となる

それではCSMは具体的に何をするのか。木村氏は「大きく5つの役割がある」と説明する。具体的には「定期的にお客様とコミュニケーションを取り、顧客満足度向上や存在的な課題を理解する」「運用上の健全性をレビューしアップデートを提供する」「リソース使用量を最適化するための提案を行うこと」「提供している機能をお客様が最大限に活用できるようにすること」そして「お客様の満足度向上と成功に向け、デル側の社内担当チームとも連携すること」の5つだ。

APEXの利用が決まった時点で専任のCSMが決まり、それ以降はCSMが継続的に顧客のAPEX活用を支援することになるという。

「CSMが最終的に目指すのは、お客様の成功(カスタマーサクセス)を実現することです。そのため、お客様のリソース利用状況や成長率、パフォーマンス状況、お客様が定義した成果がどれだけ進捗したのか、といった情報を常にトラッキングし、お客様への最適な提案とその実施を担います。これは調達段階から契約終了に伴う機器の撤去まで、一貫して行われます。つまりお客様システムのライフサイクル全体にわたって、常に伴走する存在なのです」(木村氏)

SaaS企業ではCSMの存在は一般的になっているが、ITインフラのベンダーがこのような役職を設置するのはあまり例をみない。アズ・ア・サービスとサブスクリプションモデルに対し、デル・テクノロジーズがいかに真摯に取り組んでいるのかは、このことからも感じ取れる。

近い将来には、オンプレミスでもアズ・ア・サービスとサブスクリプションモデルは当たり前になり、パブリッククラウドを選択する際の理由も、現在とは大きく変化するはずだ。調達期間の短さや初期コスト削減、インフラ管理の容易さといった理由は、主要な理由ではなくなっていくだろう。これによってITインフラの選択は、より本質的な理由から行われるようになり、適材適所でのハイブリッド環境が実現しやすくなる。APEXはそのような世界へとシフトするための、重要な起爆剤になるはずだ。

日経BP社の許可により、2022年1月31日~ 2022年2月27日掲載の日経 xTECH Special を再構成したものです。
https://special.nikkeibp.co.jp/atclh/NXT/22/delltechnologies0131/

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