働き方改革やコロナ禍の影響もあり、特にICT(情報通信産業)業界では、オフィスワークと在宅勤務を含むテレワークを融合した「ハイブリッドワーク」が広く浸透した。その主役は、何といってもノートPCやタブレットPCだろう。
一方で、工事現場や工場/倉庫でのラインワーク、警察/消防といった「現場ありき」の仕事のテレワーク化は困難で、そもそものICT化も遅れがちだったが、昨今ではICT技術を使って業務の効率化を進めようという動きが急速に広がっている。「ネット経由の作業/業務報告」「現場間や本社/支社とのWeb(ビデオ)会議」といった形で、現場ワークでもいわゆる「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が進みつつあるのだ。
しかし、極端な暑さ/寒さにさらされたり、あっという間に砂やホコリにまみれたり、強い衝撃が加わったりと、「現場」は過酷な環境であることも珍しくない。一般的なPCではすぐに壊れてしまうので、頑丈なPCが求められる……のだが、過酷な環境にも耐えうるPCは、選択肢が非常に限られる。過酷な環境に耐えることに加えて、最近利用頻度が増えたWeb会議など、負荷の高い作業をスムーズに行える性能を備えるものというと、さらに選択肢は狭まる。
「頑丈で処理パフォーマンスも高く、画面も大きいタブレットPC」というと、かつては夢のまた夢だった。しかし、デル・テクノロジーズから、その夢をかなえてくれるタブレットPC「Latitude 7230 Rugged Extremeタブレット」が登場した。この記事では、その特徴をチェックしていく。
お断り
Latitude 7230 Rugged Extremeタブレットは購入時にカスタマイズ(CTO)を行えます。ただし、カスタマイズの内容によっては別のカスタマイズオプションを選べない、あるいは選択肢に制限が出る場合もあります。


頑丈ながらも“最新世代”のスペック
Latitude 7230 Rugged Extremeタブレットは、語るべきポイントがたくさんある。どれから語ろうか迷う所だが、今回はタブレットPCとしての“処理性能”から説明していこうと思う。
先述の通り、現場ワークは過酷な環境での作業を強いられることも珍しくない。一般的なタブレットPCほど選択肢は多くないものの、防水(防滴)/耐水/防じん性能や耐衝撃性能を強化した「タフネスタブレットPC」は、従来から複数のメーカーから製品化されている。
タフネスタブレットPCは、生産コストの多くを耐環境性能や耐衝撃性能を高めることに割く傾向にある。用途が用途だけにそれは当たり前のことではあるのだが、あまりに高価すぎると手に取ってもらえなくなる。そこで少しでも価格を抑えるべく、一般的なタフネスタブレットPCは数世代前のCPUを採用したり、最新のインタフェースを非搭載としたり、ディスプレイのサイズや解像度を控え目にしたりすることも珍しくない。
しかし、Web会議システムを始めとして、最近では現場ワークでもPCとしての処理性能を求められるシーンが増えている。作業効率を向上する観点から、現場ワークでも安心して使える頑丈さと高い処理性能を“両立”できるとありがたい。

その点、Latitude 7230 Rugged Extremeタブレットは頑丈さをしっかりと維持しつつ、最新世代のCPUと大きくて見やすいディスプレイを備えている。
CPUはIntelのモバイル向けとしては最新の「第12世代Coreプロセッサ(開発コード名:Alder Lake)」を採用している。このCPUは、処理パフォーマンスを重視した「パフォーマンスコア(Pコア)」と処理効率(消費電力の抑制)を重視した「効率コア(Eコア)」を組み合わせたハイブリッド構成を取っていることが特徴で、高い処理能力を備えつつ、長時間のバッテリー駆動を実現している。
CPUのパフォーマンスが高いということは排熱設計もしっかりしないといけない所だが、防滴/防じん性能(詳細は後述)をしっかりと確保した上で、通風口と冷却ファンを搭載している。手で直接持って使っても、発熱が気になることはあまりないだろう。


メインメモリは最新かつ高速なLPDDR5-5200規格のもので、容量は8GB、16GB、32GBをから選べる。ストレージも高速なPCI Express接続のM.2 SSD(Type 2230)を搭載しており、カスタマイズで最大2TBまで選択可能だ。カスタマイズ時に「リムーバブルSSD」を選択すれば、万が一SSDに障害が発生した場合でもすぐに交換できる上、廃棄時に「ストレージ(SSD)を物理破壊する」というセキュリティポリシーを採用している企業でも、ストレージの処分をする際の手間を減らせる(※1)。
OSは最新の「Windows 11 Pro」をプリインストールしているが、そのライセンスを利用してカスタマイズでWindows 10 Pro(64bit版)をプリインストールすることも可能だ。
(※1)「リムーバブルSSDなし」を選択した場合は、ベースカバー(裏ぶた)を全て外すことでSSDを交換/取り外しできますが、防水/防じん/耐衝撃性能を維持する観点から推奨されません


外でも見やすい16:10液晶ディスプレイを搭載 タッチやペンにも対応
ディスプレイは約12型のWVA液晶で、最大解像度は1920×1200ピクセル(アスペクト比16:10)となる。このモデルの先代に当たる「Latitude 7220 Rugged Extremeタブレット」がフルHD(1920×1080ピクセル)の11.6型液晶を搭載していたことを考えると、縦方向に表示できる情報量が増えたことは特筆すべきだろう。
このディスプレイの最大輝度は1200ニトである。先代も最大1000ニトと明るい液晶ディスプレイを搭載しているが、その上をゆく輝度に対応することで、直射日光下においてさらに見やすくなった。基本スペックの底上げと合わせて、屋外での作業効率が一層高まる。

加えて、Latitude 7230 Rugged Extremeタブレットはタッチ操作とペン入力に対応している。タッチは最大10点のマルチタッチ操作に対応しており、作業用の分厚い導電性を持たない手袋でも操作可能だ。
ペンは指先操作を再現できる「パッシブペン」が1つ付属しており、本体には収納スペースもある。主にアプリ上のボタンをタッチするために使うなら、パッシブペンでも十分だろう。
別売ではあるが、より細かい入力ができる「アクティブペン」も用意されている。アクティブペンはIP55等級の耐水/耐じん設計となっており、画面に水分やホコリが付いている状態でも入力可能だ。業務上で手書きのサインをする(求める)機会が多い場合は、より精緻に書き込めるアクティブペンを用意しておくことをお勧めしたい。



最新のポート類をサポート オプションで5G接続にも対応
Latitude 7230 Rugged Extremeタブレットは、CPUやメインメモリはもちろん、各種周辺機器を接続するためのポート類も最新のものを備えている。
標準構成の場合、左側面にUSB 3.2 Gen 1 Type-A端子、microSDメモリーカードスロットとイヤフォン/マイクコンボ端子を、右側面にThunderbolt 4(USB4)端子×2を、本体底面にドッキングコネクターを搭載している。
Thunderbolt 4端子はUSB PD(Power Delivery)による電源入力とDisplayPort Alternate Modeによる映像出力に対応している。別売のドッキングステーションを使わない場合は、外部電源はThunderbolt 4端子から入力することになる。
防水/防じん性能を確保する観点から、ドッキングコネクターを除く各種ポートはカバーで覆われている。この辺も、タフネスなタブレットPCならではといった所だろう。
無線接続は、最新のWi-Fi 6E(※2)とBluetooth 5.2に対応している。加えて、カスタマイズで5G/LTEモデム(モバイル通信機能)を追加することも可能だ。5G/LTEモデムはmicroSIMとeSIMの両方に対応しており、通信エリアによってSIMを使い分けることもできる(※3)。Wi-Fiがない場所でもデータのやりとりができることは、現場ワークにとって心強い要素となる。
(※2)一部の国/地域でのみ利用可能
(※3)SIMフリーですが全キャリアでの通信を保証するものではありません



バッテリーはユーザーにより着脱できる設計で、35.6Whのリチウムイオンバッテリーを最大で2つ搭載できる(標準では1つ)。バッテリーを2つ搭載しておけば、外部電源がない状態でもバッテリーのホットスワップ(電源を投入した状態での取り換え)に対応可能だ。
なお、オプション品として「バッテリーチャージャー」も用意されている。これを使えば本体がなくてもバッテリーを充電できるので、多めにバッテリーを用意しておくことで「予備のバッテリーはいつでも満充電」という状況を作り出すことも容易である。


カスタマイズでポートも追加OK! カメラやマイクの有無も選択可能
Latitude 7230 Rugged Extremeタブレットは、本体の右側面と上面のポート類をカスタマイズできるようになっている。具体的には、カスタマイズ時に以下のいずれかを搭載できる。業務や用途に合わせて、無駄なく必要なポートを追加できるのはありがたい。
- 右側面(I/Oライトパネル)
・HDMI出力端子
・USB 3.2 Gen 1 Type-A端子 - 上面(I/Oトップパネル)
・なし(ダミーパネル搭載)
・USB 3.2 Gen 1端子(フィッシャーコネクター)
・有線LAN端子(1000BASE-T)
・シリアル端子(RS-232C)
・1次元/2次元バーコードリーダー
加えて、本体背面にスマートカードリーダーを搭載することもできる。セキュリティを高める観点でPCへのログイン(サインイン)にICカードを使っている企業でも安心して導入できる。

冒頭でも触れた通り、現場ワークでもタブレットPCに備わるWebカメラの出番は増えている。一方で、業務の都合からタブレットPCにカメラがあること自体が好ましくないというケースもある。場合によってはマイクがあることも忌避されることも考えられる。
そこで、Latitude 7230 Rugged ExtremeタブレットではカスタマイズでWebカメラとマイクの有無を以下の通り選択できる。
- カメラなし/マイクなし
- カメラなし/マイクあり
- カメラあり/マイクあり
Webカメラ付きの構成の場合、アウト(背面)カメラがオートフォーカス対応の約1100万画素、イン(正面)カメラが顔認証対応の約500万画素というスペックとなる。撮影した現場の写真をメールやコミュニケーションアプリで送信する場合、カメラ付き構成の本体を用意することで、別途カメラ(や接続用のケーブル類)を用意しなくても済むようになる。

用途に応じたオプション品が充実していることも、Latitude 7230 Rugged Extremeタブレットの魅力といえる。
持ち運ぶ機会が多い場合は、カスタマイズで本体上部に「リジットハンドル」を取り付けられる。このハンドルはプラスドライバーを使って着脱できるようになっており、不要なシーンでは取り外しておくことも可能だ。
また、本体背面にはVESAマウント用のネジ山(75mmサイズ)が用意されている。工場の生産ラインなど、動かさずに使う用途にも便利に使える。



「防爆」を含むあらゆる耐環境/耐衝撃性能を網羅
ここからは、Latitude 7230 Rugged Extremeタブレットの“本分”である耐環境/耐衝撃性能について確認していこう。
先述の通り、現場ワークでは過酷な環境での作業を行うことも多い。雨に降られたり水しぶきを受けたりしても耐えられる「防水性」、ホコリの多い環境でも問題なく運用できる「防じん性」、極端に寒かったり暑かったりする場所など、過酷な環境下でも利用できる「耐環境性」、そして大きな物理的な衝撃にも耐えられる「耐衝撃性」が求められる。とりわけ、屋外での現場ワークでは、これらの要素を強く求められる。
これらの“丈夫さ”を客観的に示す指標として、米国防総省が定めた物資調達基準「MIL-STD-810シリーズ」(いわゆるMIL規格)が知られている。この規格では、米軍が調達する物資に関する耐環境/耐衝撃性能の試験方法が定められており、現在の最新規格は2019年に策定された「Revision H(MIL-STD-810H)」である。その試験は「衝撃」「粉じん」「防滴/防水」「温度湿度」「塩水噴霧」「直射日光」から、「船舶設置機械振動」に「発砲」など、多岐に渡る。
また、防滴/防水や防じんに絞ると、日本工業規格(JIS)の「電気機械器具の外郭による保護等級」に定められている「IPコード」が有名だ。IPコードは国際電気標準会議(IEC)が定める「IEC 60529」と互換性があるが、MIL規格とは異なり水の浸入に関しては「真水」を使ってテストを行うことに注意を要する。
Latitude 7230 Rugged Extremeタブレットでは、MIL-STD-810Hに定める耐環境/耐衝撃試験のうち16項目をクリアしており、IP6X等級の防じん性能とIPX5等級の防滴性能を有している。

MIL規格やIPコードは、タフネスタブレットPCだけでなく、見た目的にはスマートなノートPC、タブレットPCやスマートフォンでも丈夫さを示す客観的指標として使われており「それなら、別にタフネスタブレットPCじゃなくてもいいんじゃない?」と思う人がいるかもしれない。
しかし、Latitude 7230 Rugged Extremeタブレットには、一般的なタフネスタブレットPCでは“忘れられがち”な「防爆性」も確保している。防爆性は可燃性のガス/蒸気/粉じんによる火災や爆発を起こさない性能のことを指し、本モデルでは「ANSI/ISA-12.12.01」に定める防爆性能を確保している。具体的には、以下のガス/蒸気が爆発または着火する可能性がある環境における防爆性能を備える。
- アセチレン
- 水素
- エチレン
- プロパン
「え、防爆性ってそんなに重要なの?」と思う人がいるかもしれない。しかし、ガソリン、都市ガスやLPG(液化プロパンガス)など、可燃性の液体やガスを取り扱うことの多い現場ワークでは、PC本体の熱による発火や爆発を防ぐ観点から防爆性能は非常に重要だ。少し意外かもしれないが、船舶に据え付けるPCについても、船の種類(船級)や設置場所によっては防爆性能の確保が義務付けられる。
少し小難しいことを説明してきたが、端的にいうと、Latitude 7230 Rugged Extremeタブレットは、現時点では“貴重な”危険物を扱うタンカーを含む洋上利用に対応するタブレットPCということだ。

デル・テクノロジーズならではのサポートも受けられる!
ここまで見てきたように、Latitude 7230 Rugged Extremeタブレットは最新世代のハードウェアと防爆性能を含む丈夫さを兼ね備える“希少な”タフネスタブレットPCに仕上がっている。これまでPCを利用できなかった過酷な環境への導入はもちろん、性能不足に悩まされていた業務にも便利に使える。
例えば、冷凍庫内や炎天下といった過酷な環境でも安定してPCを使うことで在庫管理や屋外での作業のIT化も進められる。ホットスワップ対応のバッテリーでPCの駆動時間を気にせず業務を継続したり、場合によっては会社に戻らずにデータの整理ができたりと、Latitude 7230 Rugged Extremeタブレットを活用すれば、場所を選ばずに高い生産性を実現できる。
先に少し触れた通り、このモデルは構成のカスタマイズに対応している。業務内容に合わせて、ムダなく最適な構成に仕上げられることは大きな魅力だ。加えて、24時間365日の電話対応窓口を始めとして、デル・テクノロジーズの充実したサポート体制を利用できる点も心強い。
これまで「DX」や「デジタル化」を諦めていた現場ワークの人にこそ、生まれ変わったLatitude 7230 Rugged Extremeタブレットに注目してほしい。業務改善や生産性向上に大きく貢献してくれるはずだ。

この記事はITmedia PC USER (https://www.itmedia.co.jp/pcuser/)に2022年12月に掲載されたコンテンツを転載したものです。
https://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/2212/14/news002.html