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GPUの準備は万全、データの準備は?
ブログ原稿:https://www.dell.com/en-us/blog/your-gpus-are-ready-is-your-data/
筆者:Gaurav Chawla | 2026年7月17日
主なポイント
・AIのボトルネックは、コンピュートからデータへと移行。データが分断されていたり、エージェントやモデルが扱えるナレッジへと変換されていなかったり、本番運用へ移行させることが困難であれば、GPU投資は停滞。
・「Dell AI Data Platform」は、AIストレージ、インテリジェントなデータ エンジン、オーケストレーションを統合し、セキュリティとガバナンスを全体に組み込むことで、企業を生データからAIの成果へと導く。
・「Dell PowerScale」「Dell Lightning File System」「Dell ObjectScale」の3つのストレージ エンジンが、AIライフサイクルの異なる段階を担うため、ワークロードごとに適切なエンジンが選択可能。
・GPUアクセラレーションは、NVIDIA CUDA-Xライブラリによってデータ処理レイヤーに直接組み込まれており、データを最も効率よく、高いパフォーマンスで処理。ストレージ エンジンは、GPUが消費できる速度でデータを届けることで、GPU効率を最大化。
・オープンでモジュール型のアーキテクチャーにより、エコシステムとの連携が可能に。企業は特定ベンダーのロードマップに縛られることなく、データをAI対応にするための優れた新技術を採用可能。
GPUインフラストラクチャーは整っているのに、AIの取組みが停滞し続けている場合、原因はほぼ確実にコンピュートではありません。では、何が原因なのでしょうか。
AIを取り巻く制約は、静かに移り変わっています。2026年、大半の企業にとってボトルネックとなっているのは、コンピュート処理ではなく、そこにデータを供給する側のレイヤーです。昨今のエンタープライズAIに関する議論は、ほぼ例外なく同じ問いから始まります。どのモデルを使うか、GPUは何基必要か、どのアクセラレーターを選ぶか。いずれも重要なテーマですが、AI活用の成否を決める要因はもはやそこにはありません。
AIによって最も大きな価値を実現している企業・組織は、単にコンピュートを増やしているのではありません。エンタープライズ データを、実際に行動につながるAIの成果へと、より速く、より大規模に変えているのです。社内で最も高額なインフラストラクチャーであっても、その成果は推論と行動を支えるデータの品質を超えることはできません。
「Dell AI Data Platform」は、まさにこの課題を解決するために構築されました。
企業と大規模AIの間に立ちはだかる3つの障壁
大規模にAIの成果を生み出そうとする多くの企業・組織は、同じ3つの障壁に直面しています。それらを正確に見極めることが、解決への第一歩です。
1. サイロによる分断:顧客データ、製品データ、マシンデータ、ドキュメント、画像、動画が、相互に連携しないシステムに散在しています。そのため、AIが必要な時に、必要な場所で、信頼できる情報へアクセスしにくくなります。
2. データがAIに対応できていない:大半のエンタープライズ データはAI対応ではありません。AIエージェントやモデルが意味のある結果を生成する前に、検索し、分析し、情報をエンリッチし、変換する必要があります。IDCは、エンタープライズ データの80%以上が非構造化データであり、その多くが現在のAIシステムからは見えない状態にあると推定しています。企業のビジネス プロセスを加速するには、非構造化データと構造化データの両方をAI対応にし、エージェントがアクセスできる状態にしなければなりません。非構造化データにはさまざまなデータ形式があり、それぞれのデータ タイプに固有の処理が求められます。
3. AIの実験段階から抜け出せない:データが利用可能で、かつ準備が整っていたとしても、チーム、ワークフロー、環境をまたいでAIを本番運用に移行させることに苦戦するケースが少なくありません。その結果、GPUクラスターは十分に活用されず、本来得られるはずのビジネス価値も手つかずのまま残されます。
「Dell AI Data Platform」は、AIストレージ、インテリジェントなデータ エンジン、データ オーケストレーションを組み合わせた統合AIデータ スタックによって、これら3つすべてに対応します。セキュリティとガバナンスは、ソフトウェアとインフラストラクチャーの各レイヤーに組み込まれています。
転換点:ストレージ インフラストラクチャーからAIデータ スタックへ
数十年にわたり、データをめぐる議論は、容量、パフォーマンス階層、ストレージ アクセス プロトコルといったストレージに関するものが中心でした。しかし、AIが企業の経営課題として位置づけられた時点で、このモデルは成り立たなくなります。
トレーニング、RAG、エージェント型のワークフローは、単にデータを保存するわけではありません。継続的にデータにアクセスし、変換し、検索し、情報を付加して、マシン スピードで応答します。「Dell AI Data Platform」は、従来のストレージ アーキテクチャーに無理やりこれらの新たな要求を担わせるのではなく、AIストレージ、データ エンジン、オーケストレーションを1つのスタックにまとめ、企業を生のビジネス データからインテリジェントな成果へと導きます。
各レイヤーの役割を見ていきましょう。
AIストレージ:AIライフサイクルの各段階に最適なエンジン
最初の課題は、AIが適切なデータに、適切なタイミングで、適切なパフォーマンスでアクセスできる状態を整えることです。ただし、多くの「AIストレージ」の提案では語られていない前提があります。それは、あらゆるAIワークロードに適した単一のストレージ システムは存在しないということです。経済性と物理法則がそれを許しません。大量のアーカイブ データに超高性能フラッシュを使うのはコストに見合わず、汎用NASで数千基のトレーニング用GPUにデータを供給しようとしても、必要な速度には到底追いつけません。
「Dell AI Data Platform」は、1つのシステムにすべてを担わせるのではなく、AIライフサイクルの異なる段階にそれぞれ最適化した3つのストレージ エンジンを提供します。
| ストレージ エンジン | 最適な用途 | 主な機能 |
| 「PowerScale」 | AIデータ ライフサイクル全般 | エンタープライズNASのシンプルさを備えたスケールアウト型ファイル ストレージ。取込み、キュレーション、アーカイブ、トレーニング、推論に対応 |
| 「Lightning File System」 | 超大規模なトレーニングと推論 | 数千基のGPUへ並列かつ継続的にデータを供給するために専用設計された並列ファイル システム |
| 「ObjectScale」 | 巨大な非構造化データセット | 単一のグローバル ネームスペースとAIに最適化された検索機能を標準搭載したS3互換オブジェクト エンジン |
3つすべてのストレージに共通する原則は同じです。ストレージは GPUが必要とする速度でデータを保存・供給するために存在するのであり、その逆ではありません。推論時のGPU効率を最大化することで、最初のトークンまでの時間を最大19倍高速化し、トークン スループットを5倍に向上させます。ラック ユニットあたり最大150GB/秒のスループットにより、高額なコンピュート リソースをデータ待ちにさせることなく、モダンなAIパイプラインへデータを高速に流し続けられるよう設計されています。
データ エンジン:生のエンタープライズ データからAI対応のインテリジェンスへ
データにアクセスできるだけでは、不十分です。モデルが意味のある結果を生み出すには、エンタープライズ データをAI対応のインテリジェンスへと変換する必要があります。エンタープライズ データには構造化と非構造化の両方が存在し、異なるシステムに分散しています。AIが有用な処理を行うには、その前にクエリ、処理、検索、インデックス作成、埋め込みといった工程を経なければなりません。
それを担うのが、データ エンジンです。ストレージ層の上で機能する最高水準(best-of-breed)の機能群であり、データを中央に集約させることなく利用可能にします。
1. フェデレーテッド(連携型)SQL(Starburst提供):異機種混在のデータ ソースをその場所に置いたままクエリでき、データの複製を新たに作ることなく、データが存在する場所で分析できます。原則は「データを処理の場所へ移動するのではなく、処理をデータの場所へ持っていく」です。
2. 高い拡張性を備えた処理エンジン(Apache Spark提供):モダンなAIが求める量と速度でデータを変換・準備し、特徴量エンジニアリングやAIパイプライン準備といった負荷の高い処理を担います。
3. 非構造化検索(Elastic提供):データベースに格納されていない80%以上のエンタープライズ データを、RAGやエージェント型アプリケーションで検索・活用できる状態にします。
これを見慣れたデータ スタックと分ける鍵は、アクセラレーションが働く場所です。デル・テクノロジーズは、データ フロー上の最適な位置で、GPUアクセラレーションをデータ処理レイヤーに直接組み込んでいます。構造化された列指向処理向けのcuDFやベクトル インデックス作成向けのcuVSを含むNVIDIA CUDA-Xライブラリが、SQLクエリ処理、Sparkデータフレーム、ベクトル インデックス作成/検索に統合されています。
その効果は数値に表れています。企業はSQLクエリを最大6倍、ベクトル インデックス作成を最大12倍高速化でき、準備済みデータをGPUが消費できる速度で到着させられます。データ エンジンは、CPUとGPUの処理能力を最大限に活用し、高い拡張性を備えたパフォーマンスを発揮します。その間、データはストレージとGPUメモリーの間を直接流れます。データ プラットフォーム レイヤーにはNVIDIA RTX PRO Blackwell GPUが統合され、構造化・非構造化データを大規模に処理します。結果として、準備済みでインデックス化されたデータがGPUの消費速度に合わせて到着し、処理内容に応じてCPUとGPUを組み合わせて処理されます。並列化できるタスクはGPUが実行し、その他の複雑な処理はCPUが担うことで、ジョブの完了時間を最短にしながら、コストを最小限に抑えます。
本番環境での活用事例
このプラットフォームの価値は、理論上のものではありません。すでに様々な企業において導入され、実証されています。
CTBC銀行は、「Dell AI Data Platform」上にAIを活用した不正防止機能を構築し、すべての取引を400を超えるリスク要因に照らしてリアルタイムに処理しています。その結果、不正検知の応答時間はわずか0.03秒、不正による損失は前年比40%減となりました。
デル・テクノロジーズ社内の分析チームは、「ObjectScale」上のマルチペタバイト規模のデータ レイクをその場でクエリすることでETLパイプラインを取り除き、クエリ パフォーマンスを3倍、コンピュート効率を30倍に高めました。200TBを超えるデータセットでも一貫して1秒未満の応答時間を実現しました。
NTTデータは、同プラットフォームを活用して企業顧客向けのソブリンAIファクトリー構想を立ち上げ、膨大なデータ量を数時間ではなく数分で処理しています。この事例は、デル・テクノロジーズ、NVIDIA、Starburstの連携を体現する代表例として、「NVIDIA GTC 2026」の基調講演でも取り上げられました。
いずれも実証実験(PoC)ではありません。エンタープライズ規模で稼働している、実運用のAIシステムです。
データ オーケストレーション:AIプロジェクトをAIの成果に変えるもの
ストレージとデータ エンジンは重要な課題を解決しますが、それだけで自動的にビジネス成果が生まれるわけではありません。データは依然として、取込み、準備、検索、ガバナンス、モデルのファイン チューニング、推論の各ワークフローを、連携した形で流れていく必要があります。
そこで登場するのが「Dell Data Orchestration Engine」です。高速なコンポーネントを並べればパイプラインが高速化する、というわけではありません。データをAI対応のナレッジと成果へ変えるレイヤーこそが、データ オーケストレーションです。取込みから準備、検索、推論までの流れを調整し、データが切り離された受け渡しの連続ではなく、1つのパイプラインとして流れる状態を実現します。
環境をまたいだデータ移動とAIワークフローを自動化・オーケストレーションすることで、同プラットフォームは企業・組織を次のように支援します。
・データの移動と準備にかかる手作業を削減する
・AIワークロードの本番環境への展開を加速する
・AIの取組みを実験段階から、再現可能で拡張可能な成果へと進める
つまり、オーケストレーションとは、強力なテクノロジーの集合体を、実際に機能するAIシステムへと変えるものなのです。
設計思想としてのオープン性とモジュール性
この市場には、魅力的な近道があります。単一のクローズドなAIスタックを購入し、あらゆる判断をベンダーに委ねるという方法です。導入初日はシンプルですが、100日目には落とし穴に変わります。
「Dell AI Data Platform」は、その逆のアプローチを採用しています。
・オープンなテーブル形式・ファイル形式:独自仕様によるロックインはありません
・お客様が選択可能な最高水準のデータ エンジンとストレージ エンジン:ベンダーが選んだ単一のエンジンではありません
・柔軟なエコシステム連携:推論、トレーニング、エージェント型フレームワークにわたって対応します
・モジュール型の構成要素:小規模から始め、データ処理レイヤーとストレージ レイヤーを個別に拡張できます
・あらゆる場所のデータにAIを:移行を強いることなく、コア、クラウド、エッジにわたって対応します
このオープン性は、チェックリストを埋めるためのものではありません。ベンダーのロードマップを待つのではなく、優れた新たなエンジンやフレームワークが登場した時点で採用できるようにするためのものです。そしてそれは、企業が自らのデータ、アーキテクチャー、そして未来の主導権を握り続けるためのものでもあります。
GPUの準備は整いました。次は、データの準備です。
エンタープライズAIにおける次の飛躍を決めるのは、どの企業・組織が最も多くのコンピュートを保有しているかではありません。自らのエンタープライズ データを実際に行動につながるAIの成果へと変えられるかどうかです。しかも、より速く、より大きな規模で、そして最初からガバナンスを組み込んだ形で実現できるかが分岐点になります。
「Dell AI Data Platform」は、まさにそのために構築されています。
よくあるご質問
十分な予算があるエンタープライズAIプログラムでも、GPU投資が停滞するのはなぜですか?
最も多い理由は、データの分断です。GPUクラスターは強力ですが、その生産性は供給されるデータの質に左右されます。データが各所に分散し、構造化・非構造化それぞれのサイロに閉じ込められ、あるいは大規模に運用へ移行させることが難しい状態では、最先端のコンピュート インフラストラクチャーも十分に活用されないまま残されることになります。「Dell AI Data Platform」は、まさにこのギャップを埋めるために設計されています。
3つのストレージ エンジンの違いは何ですか?
各エンジンは、AIライフサイクルの異なる段階に最適化されています。「PowerScale」は、エンタープライズNASのシンプルさを備え、取込み、キュレーション、トレーニング、推論という最も幅広いAIワークロードに対応します。「Lightning File System」は、数千基のGPUに継続的かつ高スループットでデータを供給する必要がある、超大規模な並列トレーニングと推論のために構築されています。「ObjectScale」は、巨大な非構造化データセットとデータ レイクのために専用設計されています。適切な選択はワークロード、規模、パフォーマンス要件によって決まり、3つすべてを併用することもできます。
「その場でクエリする」とは具体的にどういう意味で、なぜ重要なのですか?
Starburstが提供するフェデレーテッド(連携型)SQLにより、AIアプリケーションは異機種混在システムにまたがるデータを、中央のウェアハウスやデータ レイクへあらかじめコピーすることなくクエリできます。これにより、処理が遅くコストのかかるETLパイプラインを取り除き、データの重複を減らし、ガバナンスをシンプルにできます。データを移動したり複製したりすることなく、元の保存場所のまま利用できるためです。
非構造化データはどのように扱いますか?
Elasticが提供する非構造化検索により、構造化データベースの外にある80%以上のエンタープライズ データ(ドキュメント、メール、ログ、画像、動画)を、RAGパイプラインやエージェント型AIアプリケーションで検索・活用できる状態にします。これにより、これまで見えていなかったエンタープライズ データが、AIが活用できる資産に変わります。
このプラットフォームは、デル・テクノロジーズのインフラストラクチャーに固定されるのですか?
いいえ。同プラットフォームはオープンなテーブル形式・ファイル形式を基盤とし、モジュール型で最高水準のエンジンを備えています。コア、クラウド、エッジの各環境にわたる導入をサポートし、新たなフレームワークやエンジンが登場しても、スタック全体を入れ替えることなく進化できるよう設計されています。