エージェンティックAI時代における、人類と機械のシームレスなパートナーシップが生み出す協働アート

筆者:デル・テクノロジーズ株式会社 AIプラットフォーム・ソリューションズ本部 本部長 堀田 鋭二郎(ほった えいじろう)

AIとは、人間と機械との間で進化し続ける関係性のことです。 何百年もの間、この関係は明確に定義されてきました。機械は機械的な作業を行い、人は思考と意思決定を行います。

しかし、ここ数年、アルゴリズムとデータは、意思決定タスクを機械に委任し始めるためのツールを提供してきました。この分野は、昨今のエージェンティックAIの開発によってますます加速しています。

AIエージェントは、人工知能を利用して自律的な意思決定を行い、一連の目標を達成するためのアクションを実行するソフトウェアシステムです。ガートナーは、2028年までにビジネス ソフトウェアの33%にエージェンティックAIが組み込まれ、日常業務の15%で自律的な意思決定が可能になると予測しています。

この新たなテクノロジーは、日常業務を自動化し、インテリジェントなインサイトを提供することで、生産性に革命をもたらすことが期待されています。しかし、どのように人間とAIエージェントが連携できるかについては、まだ多くの疑問が残っています。

このようなテクノロジーは、個人の働き方や成功の創出方法を変える可能性があります。しかし、成果を出す前に、人間とAIが、どのように協力しあっているかをしっかりと把握することが重要です。

人間とAIのコラボレーションの進化
人間とAIの関係は、知識が深まり、AIモデルの能力が高まるにつれて、発展していきます。

従来のコラボレーションは、AIが人間の指示に従って成果を出すことを中心に展開されます。特にカスタマーサポートでこうした傾向が見られ、AIツールがデータを分析し、お客様に合わせた提案を行い、解決策を生成しています。テクニカルサポートのパラダイムは、技術的な問題を自律的に解決できる、よりインテリジェントで予測的なAI機能へとシフトしつつあります。
エージェントの登場により、人間がスーパーバイザーとして行動し、AIが定義された目標をベースにほとんどの意思決定を自律的に行うという新しいパラダイムが導入されました。その一例がサプライチェーン管理です。AIシステムが在庫の追跡、予測、調整を行うことで、人間は戦略的な計画に集中できます。

人間とAIのコラボレーションにおける信頼の構築
AIとのコラボレーションがもたらす機会は刺激的ですが、成功の鍵を握るのは信頼です。信頼を高めるためには、企業はAIプロセスの透明性を確保し、AIがどのようにして結論を導き出したのかを説明する必要があります。この透明性により、人間はAIシステムに対する信頼を高めるとともに 、目標を達成する能力を高められます。

同様に、人間とAIのエコシステムにおける役割と責任を明確に定義することも重要です。AIが自分の仕事をどのように補完するのかを認識することで、安定感と目的意識が生まれます。この明確さは、人間が効率向上のためにAIに頼りながらも、結果に責任を持つというパートナーシップへの道を開きます。

営業、マーケティング、エンジニアリングなどのさまざまな分野に導入されたAIは、人間のリーダーシップのもとで既にその価値を証明しています。営業では、AIツールが顧客の行動を分析し、パーソナライズされたレコメンデーション(推奨案)を提示します。こうした提案によって人間はデータ管理ではなく顧客との関係構築に集中できます。同様に、エンジニアリングにおいても、AIは設計の最適化とプロトタイピングを支援し、エンジニアが戦略的意思決定を主導できるようにします。

人間とAIの包括的なコラボレーションは、業界を変革することができます。こうしたパートナーシップは、人類と機械の両方に対する透明性と明確な期待をベースに成り立っています。

オーケストレーターとしての人間の役割
AIには技術的な能力がありますが、その可能性を引き出す中心的な存在はあくまで人間です。エージェンティックAIが台頭するにつれ、人間が実践者からオーケストレーターにシフトし、AIシステムの指針となる目標を設定し、目標を定義する必要性も高まっています。

たとえば、エージェンティックAIは、人間が望ましい目標を設定し、より微妙なニュアンスを含むインサイトを提供し、AIが生成した結果に基づいて戦略的な調整を行います。 これらのアクションには、ソフトウェアだけでは実現できない判断力と専門知識が必要です。

労働力が変化を遂げる中、モダンで柔軟なインフラストラクチャーもこれに追いついて対応する必要があります。今こそ、エージェンティックAIがITアーキテクチャーに与える影響を調査し、人類と機械のパートナーシップが最大限に発揮できるよう備えるべき時です。

人間とAIの相乗効果の力を引き出す
私たちは、人間の創意工夫とテクノロジーを融合することで、並外れた成果が得られると信じています。エージェンティックAIをワークフローに統合することで、個人や組織はより高いレベルの生産性と創造性を実現できます。

クリエイティブのプロフェッショナル集団はすでにAIを活用しており、ビジョンをより早く実現しています。企業はインテリジェントなシステムを活用して、優れた直感的な顧客体験を提供しています。これらの進歩は、AIの真の可能性が人間の能力を高めることにあると示しています。

テクノロジーとスキルの両方の観点から、人間とAIのパートナーシップに投資することで、企業はイノベーションと適応性におけるリーダーとしての地位を確立することができます。テクノロジーと人類がともに新しい機会を切り開く未来の実現に向けて、私たち全員がその一翼を担うことができます。