クラウド対抗の価格戦略
パートナー支援策も増強

デル・テクノロジーズ株式会社
常務執行役員
パートナー事業本部長
入澤 由典氏
「サーバー部門」の首位独走を続けるデル・テクノロジーズ。3年連続での受賞となった同社のパートナー事業を統括する入澤由典氏は、「今回は他社が製品供給を戻してきた中での首位で、納期対応に加えた総合力が評価されたことに満足しています」と語る。
納期対応のモットーは、受注からの早さだけでなく、契約時に提示した納入期日を厳守することにある。「取引先はサーバーが1台欠けてもシステムとして稼働しませんので、納期対応は非常に大きなポイントと認識しています」(入澤氏)
デル・テクノロジーズはスケールメリットを活かして、CPUメーカーの発表日にサーバーの見積もり受付を開始するなど、他社にはない優位性も持つ。パーツを大量調達し、仕入先にも納期厳守を求め、多国に分散した工場の稼働率を上げて、製品の安定供給と価格競争力を維持する。それがパートナーとユーザーの増加を支えるという好循環を生んでいる。
同社がパートナー支援の観点から注視しているのは、マルチクラウド化の動きである。「パートナー様はパブリッククラウドとオンプレミスを適材適所でお客様に提案したい意向があると感じます」と入澤氏が語るように、日本では欧米と異なり、パートナーがビジネスとしてシステムの更新や維持を行う傾向が強いからだ。
近年はIT要員を持たずにパブリッククラウドを使っていた中小企業がマルチクラウド化を検討する事例も増えてきたという。システム投資を長期的に見ると、オンプレミスのほうがクラウドより合理性で上回る場合が多くなる。システムの変更やメンテナンスの時期を柔軟に決められ、データの秘匿性からも安心度が高い。
ただし、クラウドを使っていたユーザーがオンプレミスに戻す場合でも、システム投資をデータ容量ベースで、利用期間ごとに支払う形はそのまま残したいという声もある。こうした希望に応えて、デル・テクノロジーズは、オンプレミスの環境で使える従量課金制のストレージサービスなどをブランド名「Dell APEX」で提供している。サーバー自体の価格競争力を高めるため、売れ筋構成でセミカスタマイズした廉価モデル「Smart Selection Flexi」も投入した。クラウドに対抗しやすいこれらの施策を打ち出し、パートナーの提案をバックアップしている。
加えて、新規ユーザーにサーバーを販売したパートナーに支払うリベート額を、今年は昨年より更に増額した。パートナー様経由でのサーバー販売の比率は毎年拡大しており昨年度は全体の70%を超えた。「日本ではパートナー抜きで我々の成長はないと判断し、今後もパートナー依存度をどんどん高めていきます」と入澤氏は強調する。
AI化に向け処理能力向上
空冷対策で筐体を小型化

デル・テクノロジーズ株式会社
データセンター ソリューションズ事業統括
パートナーセールスエンジニアリング本部
テクニカルセールス部
テクニカルセールスリーダー
頼 啓二郎氏
デル・テクノロジーズが注視するもう1つのトレンドは、企業による生成AIの導入に伴い、サーバーに求められる処理能力が高まる動きである。NVIDIA、AMD、インテルが提供するGPUの高速化、冷却機能の強化、省電力化などがカギになる。「現在はAIビジネスを狙う企業がGPU搭載サーバーを大量購入するなど、パートナー様がまず自社の業務の生産性をAIで向上させる取り組みを始めた段階です」(入澤氏)
こうした動きを捉えて、デル・テクノロジーズは高速化されたCPU、GPUへの対応をいち早く進めるとともに、自社開発の空冷技術「Smart Flow」をサーバー筐体に採用して、高温度の環境でも要求されるAI処理能力を実現している。Smart Flowは、筐体内の空気の流れを解析して効率的に冷却できる内部構造を設計し、パーツごとに温度センサーを付けて、高熱のパーツだけファンの回転数を高める仕組みだ。「冷却が困難とされる、小さい6UサイズのGPU搭載サーバーで35度までの標準動作温度に対応できた」と、サーバー関連製品を統括する頼啓二郎氏は語る。
Smart Flowによるファン動作の効率化により、サーバーの消費電力は搭載前と比べて半分になった。ユーザーの電気料金の負担も下がる。電子機器の環境への影響を評価するEPEATのシルバー認証も、日本で唯一、サーバーで取得している(2024年3月7日時点)。パートナーにとっては、高速処理、筐体の小型化、電気代の削減、環境への配慮といった点で訴求しやすい製品となる。
リアルセミナーを再開
AI導入の技術情報も充実
日本のパートナーが重視する技術面のサポートや情報提供は、正社員による電話サポートと、WebサイトやメールのDMによる情報提供で対応する。Webサイトのどこに求める情報があるのか分からないといったパートナーの声に応える形で、関心の高いテーマのホワイトペーパーも提供し、導入や運用に役立つマニュアルも整備している。
前述のAI導入について、地方で関心を持つ企業に対しては、GPUの説明から取り組み始めている。「GPUの説明やワークロードに応じた適切なGPUの紹介、またそれらのGPUをどのサーバーモデルがサポートしているかを分かりやすくまとめた『GPUサーバー選定ガイド』を、パートナー様向けのWebサイト『情報ガイドステーション』で提供しています」(頼氏)
コロナ禍で3年間中断していたリアルのパートナー向けセミナーは、2023年から東京、名古屋、大阪、広島、福岡で再開した。注目の高い空冷技術などを実機で説明している。ウェビナーと比べて、会話に迫力があり、相手の反応も分かりやすいという点で、重要性を再認識しているという。
「マルチクラウドやAI導入、情報提供に対するこの1年の取り組みは、来年の調査結果につながるはずです。引き続きパートナー様の満足度向上に向けて尽力していきます」(入澤氏)
日経BP社(https://techtarget.itmedia.co.jp)の許可により、2024年4月4日~ 2024年6月3日掲載の日経 xTECH Special を再構成したものです。
https://special.nikkeibp.co.jp/atclh/NXT/24/delltechnologies0404/

