お客様の事例 株式会社EARTHBRAIN:AI開発環境向けGPUサーバー導入事例

ビジネス課題

建設業向けデジタルソリューション開発などを行っている株式会社EARTHBRAIN(以下、EARTHBRAIN)は、積極的にAIの活用を進める中で、開発スピードや開発の自由度を高めるため、これまでクラウドでの開発をオンプレミスに移行させる必要があると考え、高性能なGPUサーバーを求めていた。

導入効果

  • メインのAI開発環境をクラウドからオンプレミスに移行することで、迅速で自由に開発できる環境を整備
  • コストを気にせずにAI開発に必要不可欠なトライ&エラーを繰り返すことができ、開発に集中できる
  • クラウド利用の年間のトータルコスト削減
  • オンプレミスの高性能なGPUサーバーへのアクセスを提供することで、AIエンジニアに心理的な安全を提供
  • クラウドにデータをセットアップする時間を削減することで、エンジニアの作業時間を短縮

オンプレミスに自由に使えるGPUリソースを確保し、迅速で自由にAIの開発ができ、クラウド開発時の課題を解決。
大手建設機械メーカーのコマツの子会社であるEARTHBRAINは、コマツ、NTTドコモ(現在の株主はNTTコミュニケーションズ)、ソニーセミコンダクタソリューションズ、野村総合研究所の4社による合弁会社として2021年に設立された。

EARTHBRAINは、「建設生産プロセスをデジタル技術で最適化することで変革が起こり、生産性・安全性・環境適応性が飛躍的に高まる」というビジョンのもと事業を展開し、主に建設分野の土木工事に焦点を当て、ソフトウェアおよびハードウェアのソリューションを開発している。

安全で生産性が高く、スマートでクリーンな未来の現場をお客様とともに創造するソリューション「Smart Construction ®」 を開発、提供することにより、建設現場をデジタル化し、データをデジタルツインにアップロードして建設生産プロセスを可視化および最適化する。このインサイトを現場の機械や設備にフィードバックすることで、建設生産プロセス全体のPDCAサイクルを加速させることを目指している。

AI開発を積極的に進めるために、高性能なGPUサーバー導入を検討

EARTHBRAINでは、開発の内製化を進め、3D、バックエンド、フロントエンドの技術スタックに精通したエンジニアを積極的に採用してきました。また、2024年4月には、AI開発チームを発足させ、AI開発も内製化している。

「我々は、幅広いAI開発に取り組んでいます。たとえば、LLMを使った生成AIの活用、フォトグラメトリによる点群の生成、建設機器の自動運転など、多岐にわたるプロジェクトを展開しています。そのために必要なインフラも幅広くなっており、データセンター規模の機器やオフィス規模のワークステーション、現場で使えるエッジコンピュータをこれからも整備していかなければなりません」とEARTHBRAINのAI開発チームのリーダーであるネットワーク&データ ソリューション開発グループ シニアエンジニアのネクロユ ポール氏は説明する。

AI開発を加速していくには、AIエンジニアを増やしていく必要がある中、EARTHBRAINでは、クラウドでのAI開発を見直す必要があったとネクロユ氏は話す。「クラウドでは、セキュリティ管理をクラウド側が提供するツールで行わなければなりません。また、クラウド上のハイスペックなGPUリソースは取り合いになっていて、そのリソースを確保するのに時間がかかりますし、リザーブドインスタンスでリソースを利用する場合には、プロジェクトの要件に合わずにリソースを無駄にしてしまうことも起きてしまいます。オンプレミスにGPUサーバーを置けば、プロジェクトに合わせてリソースを分割でき、エンジニア間のリソースの配分も行いやすくなるので、開発スピードも向上すると考えました」。

また、AIエンジニアの採用のためにもGPUサーバーが必要だったとネクロユ氏は説明する。「クラウドベースで開発しているとなると、優秀なAIエンジニアの採用も難しくなります。オンプレミスの高性能なGPUサーバーへのアクセスを提供することで、AIエンジニアに心理的な安全を提供できるようになると考えました。また、クラウドベースの開発では、コストを気にしながら開発する必要があり、トライ&エラーを繰り返す1つの障壁になるため、コストを気にせずに開発に集中できる環境を提供することも重要です」。

NVIDIA® H100 NVLを4基搭載できるGPUサーバーを求めてPowerEdgeを採用

高性能なGPUサーバー導入の検討を始めたEARTHBRAINでは、NVIDIA® H100 NVL Tensor コア GPUを4基搭載できるサーバーを複数のメーカーから探し始め、最終的にDell PowerEdge R760xaサーバーを採用。「決め手になったのは、GPUのVRAMのサイズで、94GBのメモリをサポートするNVIDIA H100 GPU搭載サーバーのさまざまな選択肢を提案してくれたことでした。NVIDIAとデル・テクノロジーズの関係性から、NVIDIA GPUの調達はしやすいと考えたことも理由の1つです。また、リモートでサーバー内のGPUの状態を管理できるiDRAC(アイドラック)というリモート管理機能が提供されていることもよかったですね」とネクロユ氏は話す。

また、デル・テクノロジーズ側の対応もPowerEdge採用の決め手となったとネクロユ氏は話を続ける。「今回会社としても初めてのGPUサーバー導入で我々としてもわからないことがいろいろあったのですが、担当の方が非常に協力的で、データセンターの選定やネットワークの構築、ラック設計や冷却方法などの貴重なアドバイスをしていただき、将来的な拡張も含めたロードマップを描くことができました」 。

さらに、運用目標に合わせた納期スケジュールを迅速に示してくれたとネクロユ氏はデル・テクノロジーズを評価している。「2024年8月末に社内承認が下りたので、9月中旬に正式に注文書を送り、2か月後にはデータセンターにGPUサーバーが納品・設置されて、12月第一週には使える形になりました。使えるようになるのは年を超えると覚悟していたのですが、非常に短期間で前倒しで納品していただいたのはありがたかったですね」。

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年間のトータルコストの大幅削減と、開発スピードの向上に期待

オンプレミスのGPUサーバーを使い始めたばかりのEARTHBRAINだが、AI開発環境を整備することで、どのような効果を期待しているのだろうか。「1つは、開発スピードの向上が非常に期待できることです。H100 NVLを自由に使える環境が整ったことで、例えばA10と比較して4倍のメモリを使え、メモリサイズに合わせたモデルの調整をすることなく開発ができるようになります。また処理時間の短縮も期待できるので、エンジニアの作業時間も短縮できます」とネクロユ氏は話す。

また、エンジニア同士の情報交換やコスト削減効果もネクロユ氏は期待している。「これまではクラウド上で別々に作業していたエンジニア同士が、同じものを使って情報交換することで、コミュニケーションが円滑になることも期待しています。より新しいモデルをコストを気にせずに試せるようになることもメリットとなるでしょう。さらに、オンプレミスのPowerEdgeを利用することで、現状よりも開発のトータルコストが下がることも大きなメリットです」。

GPUサーバーを増やして、AIエンジニアも増員していく

オンプレミスに快適なAI開発環境を整備したEARTHBRAINでは、今後もAI活用をさらに進めていくと言う。「AI開発チームが2024年4月に発足して、既存のソリューションをAIでパワーアップさせたいなどのAIに対するニーズが社内でも高まってきていますし、お客様からもAIに関する問い合わせが増えています。これらに対応するためにも、今後もGPUサーバーを増やしていきたいと考えています。デル・テクノロジーズには、CPUの省電力化や冷却技術の向上、安定調達に期待したいですね。また、エンジニアのスキル向上のために世界中のGPU活用の知見や事例などの共有についてもデル・テクノロジーズに期待しています」とネクロユ氏は話す。
西松建設株式会社
EARTHBRAINはクラウド上にデジタル化された施工条件を入力することで、最適な土配計画や施工手順、建設機械の稼働率を算出。現場のデジタルツイン上で精度の高い施工計画を短時間で実現するサービスを提供している。

「NVIDIA® H100 NVL GPUを4枚搭載できるデル・テクノロジーズのPowerEdgeに、リモートでサーバー内のGPUの状態を管理できるiDRAC(アイドラック)が提供されていることがよかったですね。初めてのオンプレミス利用で、デル・テクノロジーズ側のネットワーク構築方法などについての貴重なアドバイスも役立ちました」

株式会社EARTHBRAIN
株式会社EARTHBRAIN
ネットワーク&データ ソリューション開発G
シニアエンジニア
ネクロユ ポール氏
その上で、AIエンジニアの採用を積極的に進めているとネクロユ氏は話す。「1つのプロダクトや1つの領域をやっているエンジニアが多いと思いますが、我々の会社は、エンジニアの成長に重きを置いており、さまざまなプロダクトや領域に挑戦しているので、AIエンジニアとして幅広いスキルを得ることができます。お客様から請け負って開発するのではなく、EARTHBRAINでは、「顧客への価値創造」を最重点課題として、市場の大きい建設土木というフィールドの中でAIの適用分野を自分たちで探し出し、自分たちで提案してプロダクトを開発したり、その機能を高めるアイデアを出せるところが魅力だと思います」。

デジタル化で建設業界の安全性や生産性を高めるソリューションを提供するEARTHBRAINは、今後もAIを活用しながら、魅力的なソリューションを開発していく。

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多くの国で人口が減少していく中、人々が生きていくためのインフラをいかに効率的につくっていくかは世界共通の課題だ。そこでEARTHBRAINのAIエンジニアは幅広いAI機能の開発に取り組み、土木業界のDX化を推進している。