株式会社 旭プロダクション

お客様の事例 株式会社 旭プロダクション:Dell PowerScale事例

ビジネス課題

アニメーション制作を手掛ける旭プロダクションでは、最新のデジタル技術を用いて高品質な作品群を世に送り出し続けている。しかし、従来は作品データを保存するストレージがあちこちに点在しており、ネットワークトラフィックの増大やデータ管理の煩雑化、ハードウェア障害への対応など、様々な課題が生じていた。そこで同社では、膨大な作品データを一元的に保存・管理できる統合ストレージ基盤の導入に着手することとなった。

導入効果

  • 映像制作用ストレージの容量を約2.5倍に増強
  • 分散したストレージを統合することでストレージに関する運用管理負担を約6割削減 
  • 大幅な性能向上によりユーザーが快適に作業できる環境を実現
  • 機器設置スペースを従来の3ラックから1ラックへの1/3に削減
  • データ集約によるセキュリティリスクの低減とさらなる強化が可能

「ストレージの乱立による重複データの増加や頻発する障害への対応、機器リプレース時の移行作業負担など、これまで抱えていた様々な課題をDell PowerScaleですべて解決できました。おかげでクリエイターも快適に制作業務に取り組めています」

株式会社 旭プロダクション
管理本部 人事総務部 システム班
マネージャー
本田 拓望氏

お客様名 : 株式会社 旭プロダクション
株式会社 旭プロダクション
管理本部 人事総務部 システム班
マネージャー
本田 拓望氏

半世紀以上の長きにわたりアニメーション業界の最前線で活躍

今や日本文化を象徴する存在とも言えるアニメーション。国内はもとより、海外でも数多くのファンを獲得している。その黎明期から現在に至るまで、最前線で作品制作に邁進しているのが旭プロダクションだ。「世界中の人々に感動を与えるアニメーションを提供し、愛される企業になる」をミッションとして掲げる同社が設立されたのは1973年のこと。以来、半世紀以上にわたり、数々の名作の制作に携わってきた。

創業当初には、主に「撮影」と呼ばれる業務を事業の柱としていた。セルに描かれた絵を一枚ずつカメラで撮影する、アナログアニメ制作には欠かせない工程である。「撮影は今も当社の重要な業務ですが、かつてとは異なり様々なデジタル素材を合成する工程のことを指します。海外ではコンポジットと言いますが、日本流のアニメ制作では、コンポジット+ライティング+カメラワーク+特殊効果などの作業まで含めて撮影と呼びます」こう説明するのは、旭プロダクション管理本部人事総務部システム班マネージャー 本田拓望氏。さらに現在では、撮影だけでなく2Dデザインや3D CGの制作、編集作業など、アニメーション制作の全プロセスを一気通貫で行える体制を確立。特にデジタル技術の導入については、他社に先駆けて取り組んできた。「当社クラスの企業規模で、これだけの体制を有する制作会社は、業界でも他に類を見ません」と本田氏は力強く語る。

制作業務を支えるストレージ基盤の環境改善が課題に

このように躍進を続ける同社だが、アニメーション制作を支えるインフラ環境に一つの課題を抱えていた。それは制作中の作品データを保存するストレージの環境改善だ。元々同社では、システム班を中心に社内インフラの整備・拡充を推進。ネットワークの10Gbps化を図るなど、投資対効果も見極めつつ、クリエイターが快適に制作作業に取り組める環境を整えてきた。「ところがストレージに関しては、WindowsベースのストレージサーバーやNAS装置など、複数の環境が乱立。これが様々なトラブルを生む要因となっていました」と本田氏は振り返る。

たとえば、部署によって利用するストレージが異なるため、工程が移り変わる度に大量のデータコピーが発生。これによりサーバーやネットワークにも大きな負荷が掛かり、遅延などの問題につながっていた。また、機器台数の増加に比例して、ハードウェア障害も頻発。本田氏は「各部署でデータをやりとりすると、必然的にデータの重複が増えますので、容量もどんどん足りなくなっていきます。また、遅延や障害に対応している間は現場の業務にも支障が生じますし、どのデータがどこにあるのかという管理も非常に煩雑です」と続ける。

卓越した耐障害性と優れた運用管理性を評価しDell PowerScaleを採用

こうした状況を放置していたのでは、各部署間のシナジー効果も十分に発揮できない。そこで同社では、分散していた制作用ストレージの統合を決断。そのための製品として選ばれたのが、デル・テクノロジーズのスケールアウトNAS「Dell PowerScale H500」(以下、PowerScale)である。

PowerScaleを選んだポイントとしては、まず高い信頼性・可用性を備えている点が挙げられる。「市場には様々な高可用性技術が提供されていますが、謳い文句通りに動作するものは経験上ほとんどない。その点、PowerScaleは、最大4ノード同時障害にも耐えられますので、本当に『止まらないシステム』を実現できます」と本田氏は語る。

また、PowerScaleは広大なストレージ空間をワンボリュームとして扱えるため、従来のようにデータの所在管理に苦労させられる心配もない。加えて、ハードウェアリプレースに伴う移行作業負担を、大幅に軽減できる点も大きな決め手となった。本田氏は「とにかくデータ量が大きいので、ストレージを入れ替えるとなると、データ移行に半月~1ヶ月くらい掛かるのが通例でした。これもPowerScaleであれば、制作業務を止めることなく新しいノードをクラスタに追加して古いノードを撤去するだけ。ノード間でのデータ再配置も自動的に行われますので、ほとんど手間が掛かりません」と続ける。

パートナーの支援を活用し最適なストレージ環境を実現

システム構築に関しては、PowerScaleの豊富な導入実績を有するテクマトリックス(株)が支援。「当社では、お客様の業務環境をヒアリングした上で、最も適したモデルをご提案するようにしています。今回は比較的大規模なデータを取り扱われますので、性能とコストのバランスに優れたモデルをお勧めしました」と語るのは、テクマトリックスの宗山陽介氏。また、同 久下祐弥氏も「当社のお客様には、アニメーション/映像制作分野の企業も数多くいらっしゃいます。業界固有のノウハウなども数多く有していますので、手厚いサポートをご提供できます」と続ける。実際に、PowerScale導入後にレスポンス問題が生じたが、テクマトリックスによる調査の結果、ソフトウェア側で調整が必要なことが判明。無事問題を解決することができた。本田氏は「業界のことを知らないSIerだと、なかなかこうはいかなかったでしょう。我々としても大変感謝しています」とにこやかに語る。

また、デル・テクノロジーズでも、ユーザーへのデモや事前検証など様々な支援を提供。本田氏は「デモでは稼働中のPowerScaleからディスクを何本も引き抜かせてもらいましたが、それでもシステムが落ちないので感心しましたね。PowerScaleの耐障害性の高さを実感できました」と語る。「ストレージの購入にあたっては、容量単価を重視されるお客様も少なくありません。しかし多少コストが安かったとしても、トラブルが起きたらそんなメリットは消し飛んでしまいます。その点、信頼性/可用性に優れたPowerScaleであれば、運用コストも含めた見えないコストを効果的に抑えられます」と語るのは、デル・テクノロジーズの天野献士。また同 大関誠司も「本田様は自社の制作業務はもちろん、業界全体の業務変革やDXを進めたいとの考えをお持ちです。PowerScaleはそのキーコンポーネントの一つとなりますので、今回の導入をご支援できたことは当社にとっても大きな意義がありました」と語る。デル・テクノロジーズとテクマトリックスの支援に対し、本田氏も「10点満点で11点ですね」と高い満足感を示す。

容量と性能を大幅に改善 今後のデータ容量増加にも余裕で対応

PowerScaleによる業務改善効果も非常に大きい。本田氏は「たとえば、データの保存先が一ヵ所に集約されたことで、従来のように何度もコピーを行わずに済むようになりました。この結果、無駄な重複データがなくなり、各部門でも効率的に作業が行えています。現在は40台のレンダリングサーバーと160台のクライアントがつながっていますが、パフォーマンスが大幅に強化されましたので、レスポンスが遅いと感じる場面もありません」と語る。

さらにストレージの総容量も、従来の147TBから356TBへと約2.5倍に増加。本田氏は「アニメーション業界でも作品データの大容量化が進んでおり、年率30%程度の割合でデータが増え続けています。しかし、PowerScaleを導入したことで、今後のデータ増加にも余裕を持って対応できるようになりました」と続ける。もちろん、想定以上に容量増加が進んだ場合も、PowerScaleならスピーディかつ無停止で増設を行うことが可能だ。

また、10台に分かれていた旧ストレージを4ノードのPowerScaleに集約したことで、機器設置スペースを従来の3ラックから1ラックへと削減。これに伴い、消費電力を引き下げることもできた。「複数の装置を個別に管理する必要もなくなりましたので、運用管理工数も6割程度引き下げられました。稼働状況などの情報も専用管理ツールの『InsightIQ』で簡単に把握できるので大変便利ですね」と本田氏は語る。ユーザーが誤ってデータを消去した場合も、スナップショット機能『SnapshotIQ』による速やかな復旧が可能。また、クォータ管理機能「SmartQuotas」も、リソースの使いすぎなどを防ぐ上で大いに役立っているとのことだ。

このように大きな成果を上げた今回の取り組みだが、同社では今後もさらなる環境改善を進めていく考えだ。本田氏は「私の好きな四字熟語に『物換星移』があります。これは物事や歳月がどんどん移り変わることを示す言葉ですが、映像制作を支えるITインフラもまさに同じです。先々の変化を見越しつつ、着実に準備を進めていきたい」と展望を語る。その一環として、PowerScaleに最適化されたランサムウェア対策ツール「Superna Eyeglass」の導入検討なども進めているとのこと。デル・テクノロジーズとテクマトリックスも、こうした同社の取り組みをしっかりと支えていく。
テクマトリックス株式会社:久下祐弥氏
テクマトリックス株式会社
ネットワークセキュリティ事業部 第2営業部
プラットフォーム営業課 主任
久下 祐弥氏
デル・テクノロジーズ株式会社:天野献士
デル・テクノロジーズ株式会社
インフラストラクチャ ―・ソリューションズ・SE統括本部 UDS SE本部
アドバイザリ システムエンジニア
天野 献士
テクマトリックス株式会社:宗山陽介氏
テクマトリックス株式会社
ネットワークセキュリティ事業部 第1技術部
プラットフォーム技術課 課長
宗山 陽介氏
デル・テクノロジーズ株式会社:大関誠司
デル・テクノロジーズ株式会社
広域営業統括本部 フィールドセールス本部 東日本営業部
シニアアカウントマネージャー
大関 誠司
テクマトリックス株式会社のロゴ